京都教育センター第53回研究集会・第72次京都教育研究集会の全体会が昨年12月17日、京都市左京区の京都教育文化センターで開かれ、同志社大学大学院の岡野八代教授の記念講演と「今、学校は?憲法・平和・民主主義」をテーマにした岡野氏と現職教員らによるパネルトークが行われました。

 主催者を代表して、京都教育センターの高垣忠一郎代表と京都教職員組合の中野宏之委員長がそれぞれあいさつし、同組合の松岡寛・教文部長が基調報告をしました。

 高垣氏はあいさつの冒頭で、前日に岸田内閣が敵基地攻撃能力の保有を含む「安保3文書」を閣議決定したことを強く批判しました。中野氏は、国に教育予算を増やすよう強く要望しても「予算がない」と言われる一方で、数十兆円の軍事費を用意しようとしていることに触れ、「軍事大国になる破滅の道を進むのか、憲法9条を守り、近隣諸国と相互尊重し、一人一人が個人として尊重される社会に進むのか。今まさに、国のあり方が問われている」と訴えました。

なんでもあり「安倍レジーム」が続いている

 岡野氏は「憲法・平和・民主主義~自分らしく生きるために~」と題して講演し、安倍政権が安保法制や秘密保護法など国民多数が反対する数々の法案を強行採決し、森友・加計問題や「桜を見る会」などの政治の私物化や不祥事について説明責任を放棄したことで、規範や倫理観を踏みにじる「なんでもあり」の政治文化が根付いたと指摘。岸田政権の下でも、亡くなった安倍氏が自民党の「永久顧問」となって国葬が強行され、国会での議論を経ずに「安保3文書」が閣議決定されるなど、「安倍レジーム」が続いているとしました。

 また、政権がないがしろにしてきた立憲主義や、「個人の尊重」を定めた憲法13条の背景には「尊厳ある個人の基本的人権をよりよく実現させるためにこそ国家は存在している」という理念があると紹介。その理念を否定し、時の政権の価値観で人権を制約しうる自民党の改憲草案の危険性を訴えました。

 パネルトークでは、小学校教諭の星野由美さんが、コロナ禍や戦争への不安をつづった子どもたちの作文と、教育現場の厳しい実態を紹介。「私たち大人がどんな世界を、どんな日本を子どもたちに手渡していくのか。真剣に考えて変えていかないと」と語りました。

 また、高等学校教諭の中山義基(よしき)さんは、政治に主体的に参加する意識を育むために、参院選にあわせて選挙制度や各政党・候補者の政策を学び、校内で模擬投票を行ったことを報告しました。