7月の参院選で、京都選挙区(改選数2)で改選を迎える自民党の西田昌司参院議員は、昨年の衆院選で国民の厳しい審判を受けた「裏金」問題の当事者の1人であり、京都の自然と文化、なりわいを壊す北陸新幹線延伸計画を強硬に推進している人物です。怒りの声が広がっている「ひめゆりの塔」を巡る「歴史書き換え」発言に象徴されるように歴史修正主義、平和憲法を敵視する姿勢に加え、時代錯誤の「家父長制」に固執し、国民多数が求める選択的夫婦別姓の実現をかたくなに阻んでいます。国民がノーを突き付けた自民党政治の極端な体現者とも言える同氏に各界各層の府民から「国会議員の資格なし」「参院選で退場の審判を」などの声が上がっています。

延伸計画推進を訴える西田氏の動画(同氏のウェブサイトより)

 長大なトンネル工事に伴う地下水への影響や5兆円以上もの建設費負担が懸念される、北陸新幹線延伸計画。西田氏は、府内を縦断する現行の小浜・京都ルートの決定に主導的役割を果たし、現在は与党整備委員会の委員長を務めています。知事、京都市長が「懸念」を示し、府民各層から反対の声が上がるなか、強硬に計画を推進しようとしています。

 府内各地で住民運動が立ち上がり、京都仏教会は「千年の愚行」と批判して白紙撤回を求める署名運動に取り組むなど延伸中止を求める声が広がっています。日本共産党はこうした世論と運動に連帯して、国会でも地方議会でも一貫して延伸計画の中止・撤回を求めてきました。こうしたもとで、政府・与党PTは、昨年12月、目標としてきた25年度の着工を見送る事態に追い込まれました。着工の見送りはこれで3度目となります。

 自民党京都府議団は昨年11月、北陸新幹線延伸計画の「ルート再考」を求めた要望書を西脇隆俊府知事に提出。同党の四方源太郎府議は、ブログ(同11月21日付)で、「西田議員が府民の反対を押し切ってまで、なぜ北陸新幹線の小浜京都ルートにこだわるのか? 全く意味が分からない」と公然と西田氏を批判。同年11月20日に開催された与党整備委員会で、石川2区選出の佐々木紀衆議院議員が「米原ルート」への再考を求める意見を述べたことを巡り、西田氏は「佐々木氏が今後も米原ルートを主張する場合、委員の差し替えもあり得ると伝えた」(「京都」同日付)と報じられています。

「たかだか2兆円」財務規律無視し無責任な発言

 懸念の広がりに対して、西田氏は、「もうからないとか、採算性が悪いとか言っていたら、永久に地方の新幹線計画は実現できない」(『京都』24年12月10日付)などと述べ、費用便益比などの「着工5条件」を無視して推進する姿勢を表明。建設費についても、「関西圏の起爆剤になる構想。その予算は、たかだか2兆円程度。早急に計画をまとめて事業をやっていくべきだ」と発言(15年8月)したのをはじめ、「MMT(現代貨幣理論:自国通貨建ての政府債務であれば、財政破綻することはないとして赤字を気にすることなく財政支出を求める理論)なら全額国費で全ての新幹線を整備できる」(20年12月、西田氏の動画サイト)などと、財源や財政規律を無視した無責任な発言を繰り返しています。

 また、延伸計画に懸念を表明した松井孝治京都市長に対しては、「北陸新幹線についてはもう少し事実関係を確認した上で発信していかないと自分の首を絞めることになる」(『京都』2月7日付)とどう喝するような発言もしています。

 また、府民・市民が繰り返し求めている住民説明会の開催についても一貫して背を向けています。

漆葉さん

京都の地下に新幹線、まちも文化も生業も壊す

佛教大学教授、大泉寺住職 漆葉成彦さん

 京都の地下に新幹線を通すことは、京都のまちだけでなく、なりわいも文化も壊してしまうと思います。

 自民党の西田昌司参院議員が主導して現行の小浜・京都ルートに決まりましたが、私の住む西洞院五条付近を通ることが分かり、まさに自分事となりました。住職を務める「大泉寺」は450年の歴史があります。寺内に三つの井戸がありましたが、阪急京都線の工事で全部枯れました。

 新幹線のトンネル工事で地下水が濁ったり枯れたりすれば、地下水を使っている豆腐や漬物、料理、和菓子、銭湯、染め物などの商店や工場は、たちまち立ち行かなくなります。京都は中小零細企業のまちで、そういう人たちが連綿と京都の歴史をつないできたのです。

 30年先の完成だと言いますが、果たして東京、京都、大阪を結ぶ新幹線がその時に必要でしょうか。30年でなく、100年、200年先を考えるまちづくりをすべきです。5兆円もの工事費は、大企業やゼネコンをもうけさせるだけです。それよりも京都の地場産業の活性化、府民の生活の足を確保する在来線の拡充を優先すべきです。北陸と関西を結ぶサンダーバードを復活させていただきたい。

 北陸新幹線延伸に反対する住民団体が立ち上がり、京都仏教会も署名運動を行っています。着工は3度断念させました。自民党の中からも延伸反対の声が出されています。7月の参院選挙で北陸新幹線延伸ノーと公約する共産党を伸ばし、中止へ追い込みたい。

【京都民報5月25日付より】