記者会見する東村さん(中央)ら住民と飯田弁護士(右端)

 不動産会社「ヒューリック」(東京都)が京都市左京区岡崎で進める、名勝「無鄰菴(むりんあん)」の西側のホテル計画(高さ14㍍、4階建て)を巡り、開発許可が必要な「形状変更」が行われたにも関わらず、京都市が「開発非該当」としたため、建築確認だけで工事が進められていることは違法として、周辺住民ら678人が6月18日、建築確認の取り消しを求めて、市建築審査会に審査請求をしました。

 市では、開発区域の面積が500平方㍍以上であっても、30㌢を超えない切土、盛土については「開発行為」に該当しないとの除外規定を設定。同計画地の敷地は約3000平方㍍あるものの、切土は30センチを超えないとして、市は「開発非該当」としました。

 これに対して、審査請求書では、敷地北側入り口周辺の地盤高は、前面道路(仁王門通り)の歩道より約50㌢程度高く、事業者の計画図では歩道と同一の地盤高とすることになっていると指摘。これにより「約50㌢の切土が発生することは明らか」と述べ、市が十分な調査をせずに「非該当」としたことは、「違法かつ不当」と主張しています。

 審査請求には、計画地南東に隣接する老舗料亭「瓢亭」や近隣の住民らほぼ全員が名を連ねました。記者会見で、代理人の飯田昭弁護士は「ホテル予定地と隣地とは2㍍の高低差があり、開発許可により地盤の安全性などがチェックされないと近隣住民の安全が担保されない」と述べました。「南禅寺・岡崎地区の景観と住環境を守る会」の東村美紀子共同代表は「市はいったい、どこを向いているのか。住民の権利は、ことごとく踏みにじられている」と訴えました。

 計画地は、国が「重要文化的景観」と選定した地域にあり、併せて、無鄰菴からの眺望にも影響を及ぼすことから、近隣住民らは計画見直しを求める署名運動を展開。建物の高さを10㍍に抑えるため、眺望景観保全地域に指定するよう申し立てを市に行っています。