中小企業への賃上げ支援策を求める京都地方最低審議会の答申

「一者たりともとりこぼさない―」答申の姿勢に賛同

 物価高騰で府民生活が大打撃を受けるもと、大幅な賃上げと、賃上げを行う中小企業への支援策が求められています。最低賃金の大幅引き上げなどを求めている京都総評の柳生剛志事務局長に、最低賃金をめぐる情勢や、中小企業支援策などについて聞きました。

京都総評・柳生事務局長

目安を上回る答申10年ぶり

 ─京都地方最低賃金審議会は8月27日、京都府内の最低賃金(時給)を現行の1058円から64円引き上げて1122円と答申しました

 答申は、国の審議会が示した目安より1円高い引き上げ額となりました。府の答申で、中央の目安を上回ったのは10年ぶりです。たった1円ですが、中央の目安を上回ったことは画期的な到達です。

 一方で、私たちが行った最低生計費調査で、単身労働者が京都市内で普通に生活するには「時給1900円以上必要」との結果から見ると、この最賃では生活できません。さらなる引き上げを求めて8日に異議申し立てを行いました。

 最賃改定の発効日は、例年10月1日(原則は改定額の公示から30日)ですが、中央審議会の公益委員が発効日を地方で議論しても良いという見解と、使用者側の強い意向によって発効日が遅らされ、今回は11月21日から適用される見通しです。発効日が遅れる県が続出し、秋田では3月31日発効など、一刻も早い賃上げが求められる中で、看過できない事態です。

 ―答申では、賃上げを行う中小企業への税や社会保険料の軽減、業者支援制度の要件緩和などを盛り込んでいます

 答申で、中小企業が賃上げできる環境の整備が必要だとして、税の減免や社会保険料の事業主負担分の減免などの直接支援を求めています。

 また、現在実施されている「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」などの思い切った要件緩和や拡充も要望。政府が行っている「業務改善助成金制度」についても、「設備投資や人材育成などを伴わなくても活用できる要件緩和」や「キャリアアップ助成金」などの各種助成金制度の拡充などが盛り込まれています。

 これらの助成制度は、設備投資が必要なものがあるなど、要件が厳しく、中小企業にとって利用しづらい制度でした。答申の示す中小企業支援創設は、私たちが求めている施策と共通しています。

 また、答申では、「地域間格差による労働力の流出の防止」を求めています。これは私たちが求めている、全国一律の最低賃金制度の実施に通ずるものです。政府は速やかに法改正すべきです。

喜ばれている「真水の支援」

 ―賃上げを行う中小企業支援へ、政府や京都府がどのような役割を発揮すべきですか

 岩手、群馬、山形などの県では、賃上げを行った中小企業に対し、直接助成金を支給し、事業者から喜ばれています。岩手の支援策は、時給を上げた中小企業に一人当たり6万円を支給するもので、「真水の支援」です。

 こうした制度を京都府としても行うべきです。しかし西脇知事は、府独自の中小企業支援制度に背を向けています。来年春の知事選挙では、具体的な財源なども示しながら、中小企業への直接支援制度の創設を政策提案したいと考えています。

 政府は、6月の骨太の方針で、補助金制度などで中小企業支援を行うと明記しています。しかし、自民党は、賃上げ支援策も具体化しないまま総裁選を行い、メディアをジャックしている始末です。

 前述の答申でも、政府が中小企業支援策の中身を示さなかったとし、「審議会の議論が進展しないなど大きな影響を受けたと言わざるをえない」と批判。そのうえで、「最低賃金に関わる事業者を一者たりとも取りこぼさない、賃金上昇で受ける経営的負担に対する直接的な実効ある大胆な支援を必ず執行されることを政府に強く要望する」としています。私たちも同感です。一刻も早く国会を開き、中小企業への支援策を示すべきです。