会見で報告する中澤氏(中央)と梶川氏ら(7月14日、京都市内)

412人が協力し試算「詳細な調査、意義ある」

 最低賃金は時給1900円が必要─今年の最低賃金改定に向けて、京都府でも地方審議会の審議が始まるのを前にした14日、京都総評(梶川憲議長)は京都市内で記者会見を行い、京都の若者が自立し、人間らしく生活するために最低必要な生計費の再調査結果を報告し、それに必要な賃金を発表しました。「20年代に時給1500円達成をめざす」という政府の目標では遅く、早期実現と賃金水準の引き上げが必要だと強調しました。

 最低生計費試算は、生活スタイルや所有物を調査し、生活に必要な費用を積み上げて算定。これを基に必要な賃金に換算します。

 京都総評では前回調査(2018年~19年)で得た412人の対象者の数値をベースに、今回、コロナ禍や近年の物価高騰などの社会情勢を踏まえてデータを更新し、20代の労働者の意見も反映させて再試算しました。

 前回は、京都市北区で25歳の単身者が“ふつう”に暮らすために必要な費用は、男性で月額24万5785円、女性で月額24万2735円でしたが、今回の再調査では、男性が月額28万4202円(15・6%)、女性が月額28万3391円(16・7%)に増加。時給換算では、男性=1639円から1895円(256円増)に、女性=1618円から1889円(271円増)に上昇しました。

 梶川議長は、時給1900円は、現在の最賃モデルを示すものだが、実際の府の最賃1058円がそれと乖離していることを読み取ってほしいと述べ、「1500円の実現を20年代に間にあわせればいいという政府の目標は古い。1500円の水準はまったなし」と話しました。

最賃審議会、生計費資料ないまま議論

 調査に協力した静岡県立大学短期大学部の中澤秀一准教授が、調査方法と前回試算結果との比較などについて報告。22年から続く物価上昇の影響とコロナ禍を経たライフスタイルの変化として、音楽や映画配信のサブスクリプション費用や男性のコスメ費用があらたに追加された一方で、行楽や冠婚葬祭は回数を減らす傾向がみられたことをあげました。

 中澤氏は、最低賃金を話し合う審議会で、労働者の生計費についての公的資料がないまま議論されている実態があると指摘し、「京都で412人の協力を得た詳細な生計費試算調査の結果には意味があり、審議会の議論でも参考にしていただきたい」と述べました。

 再調査を基に、人間らしい労働時間(月150時間労働)を加味して試算した最低賃金は、時給1900円が必要になると説明。「2020年代に1500円」に引き上げる政府の目標について、「あまりにもスピードが遅いし、金額も低すぎる」と指摘しました。

 さらに、生計費に地域差がないことから、全国一律の最低賃金制度の導入と、政府や府が賃上げのための中小企業支援策を行うことを求めました。

 同調査で、当事者世代から意見を聞く会議に参加した、京都生協労組の中嶋萌書記長と総評青年部の春山未央事務局次長が発言。「将来不安から、必要最低限で足りるものにはお金をかけない傾向がある。多くの食品の値が上がり、最近おコメを食べていない」(中嶋)、「憲法25条で保障された、健康で文化的な最低限度の生活は、今の最賃では得られない」(春山)と述べ、新たに試算された時給1900円の水準への引き上げに期待しました。