「勝利裁決」を受けて記者会見を行う(左から)当事者の男性、(1人おいて)大河原、福山両氏ら(5月28日、京都市役所)

請求から2年、再審査の結果

 勤務中に転倒して負傷し、公務災害認定を求めていた京都市職員だった男性が、再審査請求の結果、2年がかりで公務災害の認定を勝ち取りました。再審査請求にあたり、日本共産党の倉林明子参院議員を通じ、政府に対して認定基準を巡ってヒアリングを実施。男性は、「倉林議員の尽力で、聞き取りが実現し、大いに励みになった」と語っています。

 京都市職員だった男性は2023年3月、訪問先での移動中に道路の段差につまずいて転倒し、顔を7針縫うけがを負いました。地方公務員災害補償基金京都市支部に対し、同月に公務災害の認定を請求しましたが、同年5月に公務に起因するものではないとして却下されました。これを不服として、同年7月に同支部審査会に審査請求しましたが、24年1月に棄却。

 棄却を受け、24年2月に地方公務員災害補償基金審査会(東京都千代田区)に再審査を請求。同審査会は今年4月24日付の裁決で、「公務に起因するものと認めることが相当」とし、京都市支部の認定と同支部審査会の裁決を取り消しました。

「労災」と「公災」基準同じと明言

 男性の弁護団は24年9月、倉林議員を通じて厚労省と総務省に対して聞き取りを実施。この中で、民間労働者の労働災害と公務災害の認定基準を巡り、両省とも基準に違いはないと明言。厚労省は、平坦な道路で転倒して負傷した場合、「業務遂行中であれば、基本的には労働災害」だと答えました。両省が示した認識を、弁護団は再審査請求の意見陳述(24年12月)で、同審査会に対して示しました。

 公務災害の認定を受け男性は、「倉林議員の尽力により、総務省と厚生労働省の聞き取りが実現し、再審査請求を進めるにあたって大いに励みになりました。ありがとうございました」と語りました。

 男性と弁護団は5月28日、京都市役所で記者会見を実施。認定に至った経緯などについて報告しました。

 男性は、「市職員の皆さんから『これでは安心して働けない』と励まされ、署名に協力してくれた。2年がかりで、やっと当たり前のことが当たり前に通った」と述べました。

 弁護団の大河原壽貴弁護士は、今回の事例では転倒が公務に起因するかどうかが争点となったと説明。地方公務員災害補償法の解釈では、故意や天変地異によるものでない限り、起因性は認められると指摘し、「京都市支部、支部審査会が、法で定めた解釈より狭めたことに問題があり、その点が再審査で是正された」と強調。過去に公災認定を断念したケースも多数あったと予測できるとし、「そういう人に保障が及ぶ大きな機会になる」と語りました。

 福山弁護士は、労災と公災で認定基準が同じなのに、認定結果に差が生じれば、「公務員は安心して仕事ができないことになり大きな問題だ。差が生じないよう働く者の権利を守っていく必要があり、我々も頑張っていきたい」と述べました。