福間さん(中央)とアストロリコのメンバー

 末期がんと宣告されながらも奇跡的に回復し、近年やっと舞台に立ち始めたタンゴ歌手の福間むつみさん(元宝塚歌劇団花組男役・翼悠貴)と、京都を拠点に活躍する日本屈指のタンゴバンド・アストロリコとのライブが12月24日、国内外のトップアーティストらが踏んできた舞台・ライブシアター「祇園JTN」(京都市東山区)で開かれました。

 アストロリコがピアソラの「リベルタンゴ」など2曲を演奏した後、福間さんは真っ赤なバラ一輪を手に、軽快なテンポのコンチネンタルタンゴ「バラのタンゴ」で登場。

 「ブエノスアイレスのマリア」では、気丈な女性を情熱的に歌えば、キリストを暗示した「白い自転車」では、自転車に乗った白ひげの男が奇跡を起こして人々を喜ばせながらも、最後は排斥され昇天する不条理劇を、ドラマチックかつ大きなスケールで演じ切りました。

 余命半年と医師に告げられ、生前葬も行ったという福間さん。「我が死へのバラード」では、まさに自ら命を絶とうとする主人公の鬼気迫る姿をスローテンポで重厚な演奏をバックに、迫真の演技で表現。

 「最近、亡くなった人たちを生きていたときより身近に感じるようになった」と舞台で語り、歌手としてアストロリコと共演しながら、亡くなった宝塚歌劇団の先輩で花組男役トップスター大浦みずきさん(福間さんの先輩)と、ゴスペルシンガーの越智順子さんを追悼する思いも込めます。大浦さんの父で、詩人・作詞家の阪田寛夫さんが邦訳し、大浦さんが好んで歌った「チェ・タンゴ・チェ」、越智さんが愛唱したビートルズナンバ—を独自のカラーで歌い上げると、観客は、生前の2人の元気な姿や、死線を乗り越えてきた福間さんの心境に思いをはせ、目頭を熱くしました。

 今回のライブは、福間さんの完全復活とともに、「私はアストロリコの専属歌手」と語っていた大浦さんや越智さんの継承者である「タンゴ歌手・福間むつみ」を印象付けるものとなりました。