保護者らの切実な要求となっている京都市の全員制中学校給食をめぐり、市教育委員会が、同給食を実施しない理由に、「食選力」という“珍論”を持ち出していることが分かりました。現在のデリバリー弁当か、持参弁当かを選ぶ「選択制」給食が、子どもたちの「食選力」につながるという主張です。専門家は「選べない子どももいるのに無責任」と指摘します。一方、政令指定都市20市のうち17市が、全員制給食を実施するか全員制に向けた動きをしていることが判明し、京都市教委の主張の異常さが浮き彫りになっています。

 「食選力」が持ち出されたのは、11月10日の市議会教育福祉委員会です。全員制給食を求める請願(同29日本会議で、共産党を除く多数で不採択)審査で、市教委は「家族がつくる持参弁当か給食かを自分で選ぶことが、子どもたちの成長にとって大事」で、「食選力」を培うことにつながると主張。経済的理由や家庭の事情で、選択できない子どもたちのいる実態を無視した無責任な発言をしました。

 本紙が政令指定都市の全員制給食の実施状況を調査したところ、20市中、12市が既に実施。残る8市のうち5市で実施に向けた準備や動きがあり、選択制のままとなっているのは京都、新潟、名古屋の3市だけとなっていることが分かりました。動きのある5市のうち、堺市は全員制の実施に向け今年度から各中学校で配膳室などの整備を進める計画です。神戸、広島両市は9月、それぞれ移行方針を策定。横浜市は市長が9月議会で、全員制を目指すと表明しました。相模原市では、全員制の実現に向けたアンケートを実施し、その結果を踏まえて来年度以降に方針をまとめる予定です。

 指定都市では、学校数も多く、設備費用などの問題から全員制への移行が遅れていました。しかし、全員制を望む保護者らの運動や世論を受け、既に選択制は圧倒的少数派になっています。京都市教委の選択制に固執する姿勢が際立つ状況となっています。

無責任な主張に驚きあきれる■「より豊かな学校給食をめざす京都連絡会」事務局長 金井多恵子さん

金井多恵子さん

 「食選力」という言葉を聞いた時は、食を正しく選び、健康に生きる力を育むのかと思いました。ところが、市教委の言う「食選力」は、家庭から持ってくる弁当か、業者が作る弁当給食かを選ぶ力をつけるためと聞いて、驚きを通り越してあきれてしまいました。選択制給食を実施する理由としては、あまりに無責任です。

 家庭からの弁当を希望しても、厳しい生活や労働環境下で、弁当をつくれない親や子のつらさ。親は弁当給食を頼んでほしくても、弁当給食を食べている子が少ないと、周りの目が気になり頼めない現状があります。「小学校のような全員制の中学校給食をめざす連絡会」が今年、実施したアンケートでは、弁当給食を頼まない理由として「食べている子が少ない」が過半数になりました。コンビニのおにぎりやパンを買って持ってくる子、中には、何も食べない子もいるのが現実です。  必要なのは「食選力」ではなく、小学校のような全員制の中学校給食です。成長期の大切な時期に、温かく安全でおいしい栄養豊かな給食をみんなで一緒に食べることは、京都市の中学生にも欠かせません。給食から学ぶ食育は、一人ひとりの子どもの人生を豊かにすると思います