埋め立て計画が浮上しているくつわ池(宇治田原町)

 宇治田原町で、平安時代に国家事業で造られたとされ、同町の文化財百選にも選ばれている「くつわ池」を町が埋め立てる計画を進めていることが、同町議会3月定例会で明らかになりました。町民からは「歴史的にも観光の面でも貴重な池を埋めるべきではない」との声が上がっています。

 くつわ池は、「末山・くつわ池自然公園」内にあります。1991年、同町教育委員会が文化財百選を選定した際の説明文などによると、平安時代に編纂された歴史書『日本紀略』には831(天長8)年、農民の要望により、朝廷の国家的事業として造られた南側の香達之池(古池)と、江戸末期に北側に造られた新池が水路でつながれ、その形が馬具のくつわの形に似ていることから「くつわ池」と呼ばれるようになったとされています。

 また、1301(正安3)年から始まった田原祭の神事では、かつて田原(宇治田原町)、佐山(久御山町)、佐古(同町)の各郷から神輿が集まるなど、地域の信仰を集めた地でもありました。

 同自然公園では、両池の景観を生かし、バンガローやバーベキュー棟など、キャンプ場として整備され、池は釣りも楽しめるなど人気を集めてきました。

 ところが、2012年8月の府南部豪雨時に新池が決壊。跡地は、駐車場やキャンプ場として整備されることになり、現在工事中です。古池は、昨年2月、土地所有者で管理者の郷之口生産森林組合により、防災対策として約900万円をかけて矢板鋼板による護岸・堤体の補強工事が行われました。

 古池の埋め立て計画が発覚したのは3月22日の同町議会予算特別委員会。公園事業費の説明資料に「くつわ池整備工事 池の安全対策(フェンス等)を実施」と書かれてあり、日本共産党の今西利行議員が内容を質問し明らかになりました。

 町が今西議員に提示した資料によると、12年の新池決壊時に土砂や立ち木を含んだ水が府道宇治木屋線を直撃したとして、矢板鋼板による護岸・堤体の補強工事だけでは不十分で、さらなる堤体補強や堤体幅の拡幅を実施しても「万全とはいえない」として、池の3分の2を埋める方針を導き出しました。

 住民からは「くつわ池自然公園は池があり山があるからいい。シンボルの池を安易に埋めるべきではない」「町にとって歴史的に大切な池。残すべき」「防災は大切だが、池を残す方法も検討したのか」「町はまともに説明もせずに埋め立て計画を提案してきた。そんなやり方でいいのか」など、批判の声が上がっています。

 今西議員は「町の貴重な文化遺産を残しつつ、防災対策を進めることが必要だ」と述べています。