講演する印鑰智哉さん

 政府・与党が通常国会から継続審議となっている種苗法改悪案を今国会で強行させようとするもとで、「日本の種子を守る会」アドバイザーの印鑰智哉(いんやく・ともや)さんを講師にした学習会が11月5日、京都市中京区のハートピア京都で開かれ、農民や市民ら50人が参加しました。主催は労働組合や農民連などでつくる「農林業と食料・健康を守る京都連絡会」。

 種苗法改悪案の狙いは、国に登録された「登録品種」について自家増殖を原則禁止し、種はすべて民間の種苗会社から購入させようというもの。18年に廃止された種子法では、公的機関を中心に米・麦・大豆の安定的生産が進められてきました。政府は同法の廃止と同時に、公的機関が持つ種苗の知見を民間に提供するという「農業競争力強化支援法」を強行。農水省は、シャインマスカットが中国や韓国で「無断」栽培されていることを上げ、「自家増殖が種苗開発への民間参入の障害となっている」(17年2月の知的財産戦略会議)としていました。

 印鑰氏は、「無断栽培ではなく、開発者である日本の政府がそれぞれの国で品種登録をしなかったから。政府の怠慢を棚に上げて、自家増殖を原則禁止とするのは、お門違い」と指摘。また、日本の主食である稲作で、稲の登録品種は北海道で生産量の88%、青森で99%にのぼり、病害虫に強い品種が行政の援助を受け開発されてきた歴史があると述べ、自家増殖が禁止されれば、農家への影響は計り知れないと指摘。「種は農民のものであり、気候、風土に合った土地で記憶され、作り続けられるもの。もうけを最優先する企業では農業が衰退する」と強調しました。

 一方、23道県で主要農作物の種苗事業を支える種子条例が成立し、千葉県や石川県などでは学校給食での有機米使用が始まっていると紹介。「国連は小規模農家、有機農業を重視している。国が安全で安心な食の確立を支援することが日本の種子の権利を守ることにつながる」と語りました。