戦争準備に抗し平和を発信 「9条の碑」完成、京丹後市・たんご協立診療所

京丹後市の京都民医連「たんご協立診療所」で4月19日、敷地内に憲法9条の条文を刻んだ石碑が建立され、除幕式が開かれました。診療所職員や利用者らが参加し、9条の碑を通して平和な社会の実現を発信していこうと設置を祝いました。
建立計画は、同診療所の川崎繁所長が提起。「『憲法9条の石碑』を丹後に建立する会」が寄付を呼びかけ、300人以上から計108万2000円が集まりました。
完成した石碑は、同市丹後町の海岸にある名勝「立岩」の形を模したもので幅1・3メートル、高さ85センチ。同診療所の入り口の横に建てられました。
除幕式で川崎所長は、同市には米軍レーダー基地が設置されるとともに、近隣の舞鶴市では海上自衛隊基地に弾薬庫新設が計画されていることに触れ、「この地域が戦争の最前線になりかねない状況になってきている」と指摘。
こうした状況下で、平和を発信する9条の碑を多くの住民の協力で建立できた意義を強調し、「丹後が平和と憲法を輝かせる街になっていくよう頑張っていきたい」と述べました。
川崎所長や同建立する会のメンバーで、石碑を覆った布を取って参加者にお披露目すると、歓声と拍手に包まれました。
伊藤千尋氏が講演「過去の記念でなく将来へ発信するもの」
除幕式後には、全国の9条の碑を取材している元朝日新聞記者でジャーナリストの伊藤千尋さんが記念講演。伊藤氏は、今回の9条の碑は、全国53番目の建立であることを紹介。また、戦後80年にあたる今年の憲法記念日(5月3日)に全国で新たに六つが建てられるなど、設置の取り組みが広がっていると語りました。
世界84カ国を取材する中で、他国と比較して日本は国民の中に「戦争はよくない」という意識が浸透していることを実感してきたと語り、「9条が血、力となり、我々に根付いてきたということだ」と強調しました。
その上で、日本政府が軍備拡張にまい進していることに対し、この道を進めば国民生活の破綻が訪れると警鐘を鳴らし、「記念碑というものは過去を記憶するものだが、9条の碑は違う。将来に向けて、現在の日本がおかしかったらまっとうなものに変え、平和に生きられるような世界をつくっていこう、と目に見えるかたちで発信するものだ」と意義を強調しました。