産総研監修「起震断層・活動セグメント」をもとに、ほうそのネットと本紙が加筆・作成。黒線枠内が陸自祝園分屯地。①松野山活動セグメント②佐保田活動セグメント。点線は地震調査研究推進本部の全国地震動予想図2023年版で示された活断層

産総研、政府推本の資料に明示 大型弾薬庫新設方針「実地調査を」

 陸上自衛隊祝園分屯地(精華町、京田辺市)の大型弾薬庫新設を巡り、「京都・祝園(ほうその)ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク」(ほうそのネット)はこのほど、同分屯地内を貫く活断層の存在の可能性を指摘する複数の公的機関の資料が存在しているとして、詳細な解説を添付し、実地調査を求める公開質問状を防衛省近畿中部防衛局に提出しました。防衛省は12日に回答するとしています。

 資料は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が監修した「起震断層・活動セグメント」()と、文科省の地震調査研究推進本部(推本)の全国地震動予想地図2023年版。

 産総研の資料は、▽分屯地西側を北東─南西方向に縦断する断層や、南北方向に伸びて分屯地西側の敷地に迫る断層など(松野山活動セグメント、図の①)▽南北方向に伸び、既存の弾薬庫が存在する分屯地東側の敷地に迫る断層など(佐保田活動セグメント、図の②)─の存在を図示しています。

 推本の資料は、ほぼ佐保田活動セグメントに沿って、分屯地東側を北北東─南南西に縦断する活断層(図の点線部分)を図示しているほか、分屯地内に、今後30年以内に震度6以上の揺れに見舞われる確率が高い地域があることも示しています。

 これまで、防衛省は、活断層に関する町や町議会、住民からの質問に対し、文献調査をした結果、敷地の南側に活断層の可能性がある地形は分布しているものの、敷地内にはないことを確認したと説明。分屯地を縦断する松野山活動セグメントの資料は古いなどとして、活断層の存在を否定していました。

 公開質問状では、複数の公的機関の資料に、分屯地敷地内を貫く活断層があるとし、防衛省が古いとしている産総研の松野山活動セグメントの参考文献は新しいもので、現在も有効であるとして公表しているなどと解説。

 ▽弾薬類の搬入・搬出作業や点検・整備の作業時に地震が発生した場合に弾薬や爆薬・信管が落下するなどして暴発する▽弾薬類の運搬中に道路上で地震に遭遇して爆発する―など想定外の事故の可能性が起こりうると指摘し、資料で存在する可能性が明示された断層を横切るように土を掘り、地層のずれを確認するトレンチ調査の必要性を説いています。

 *起震断層 まとまって一つの地震を発生させる可能性が高い断層のグループ

 *活動セグメント 断層活動に伴って発生する地震を繰り返す活断層の最小単位の区分