舞台あいさつする(左から)山﨑、祷、黒住の各氏

 今年のフランス・カンヌ国際映画祭(5月)で、監督週間や批評家週間と並ぶ並行部門の一つ「ACID部門」に、日本映画で初めて招待された16㍉の劇映画『やまぶき』の上映が12日から始まり、初日上映後に、京都文教大学出身の山﨑樹一郎監督が、主演の祷(いのり)キララさん、黒住尚生さんとともに舞台あいさつしました。

 物語は、韓国の元有名乗馬選手で、父親の会社倒産で多重債務を背負い、岡山県真庭市に流れついたチャンスと、中東の戦場でジャーナリストの母を亡くし、沖縄の基地建設反対などを訴えるスタンディングアピールに参加したことで刑事の父にとがめられる女子高生・山吹を軸に展開します。

 地方が切り捨てられ、いまだ家父長制のなごりなど日本社会の歪みがもたらす悲劇や、その呪縛から逃れようとする営みを描いた群像劇。

 舞台あいさつで、山﨑監督は、16㍉フィルムでの撮影初挑戦した理由について参加者から問われ、京都市出身の佐藤零郎(れお)監督が16㍉フィルムで撮った『月夜釜合戦』の美しさに魅せられ、同監督から「16㍉に向いている」とアドバイスされ、決意したことを明かすとともに、学生時代に見た機動性に富んだ16㍉フィルムの作品の影響についても語りました。

 山吹役の祷さんは、なかなか撮り直しがきかないフィルムの撮影の制約があるからこそ集中できたと言い、自ら置かれた状況から「もう一歩進みたい」と思う主人公の気持ちを表現しようと、脚本にない演出を試み、監督に採用されたエビソードを表現豊かに語りました。

 山吹に好意を寄せる男子高校生を演じた黒住さんは、初めてのフィルム撮影の感動や、真庭市で合宿し、一丸となって作品をつくる姿に多くを学んだことなどについて語りました。

『やまぶき』
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