国土交通省は8月25日発表した2023年度予算の概算要求で、府内を縦断する北陸新幹線の敦賀─新大阪間の整備費について、具体的な金額を示さない「事項要求」としました。斉藤鉄夫国土交通相は、同日の会見で同延伸計画について、地元から反対意見が出されているとし、京都駅での建設や地下水への影響、残土の処理などの困難性について触れ、「精査が必要」と述べました。

 国交省は19年度以降、同区間の環境影響評価(アセスメント)などの費用として毎年約13億円程度を計上してきました。しかし府内の南丹市美山町や京都市京北の自治会や住民が、政府の説明が不十分として、環境アセスの受け入れを拒否しています。

 国交省は、概算要求時に事業内容を明らかにすることが困難だとし、追加経費について、予算編成過程で内容が明らかになった際に要求する「事項要求」で対応するとしています。

 与党・整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(与党PT)は23年度の着工を決議していますが、見通しは立っていません。

 斉藤大臣は、同計画について、「一部地域で、環境への影響に対する懸念から事業に対し反対の意見があり、環境影響評価の現地調査が当初計画より遅れている」と認めた上で、「京都駅や新大阪駅の位置や工法、地下水への影響、発生土の処理など施工上の課題についても精査を行うことが必要不可欠だ」と述べました。

 京都駅の地下駅の建設や、地下水への影響、残土の処分などの問題は、西脇隆俊府知事も建設上の困難を認めており、識者からも批判や疑問の声が上がっていました。

建設の困難性明らか、計画白紙撤回を

 「北陸新幹線京都延伸の環境アセスの一旦停止を求める会」の榊原義道事務局長は、府内で14グループが延伸の撤回などを求めて活動し、国に対して同延伸の白紙撤回を求める署名が2万6000人分以上集まっているとし、「国は、地下水への影響や建設残土の処分などについて、具体的な説明を一切せず、建設を進めようとしています。しかし多くの専門家は建設が困難であると認めています。市民の反対世論が大きくなるともに、建設そのものの困難性が明らかになっています。計画は白紙撤回すべきです」としています。