堤卓也さん

 北陸新幹線延伸計画を考えるようになったのは、2019年に右京区京北に漆を植樹したことがきっかけです。

 実家は約100年前から漆の卸売りをしています。漆は縄文時代から使われてきた堅牢で美しい塗料です。もっと身近に漆を知ってほしいと、木製のサーフボードやスケートボードを作って、漆を塗って、傷ついたら直す、持続可能な漆の将来を考えています。工芸だけでなく、国を超えて林業家やアーティストたちと取り組みを進めています。

 京北に通う中で、林業家や移住してきた家族たちと知り合いになりました。昨春、地元の方たちと計画ルートと言われる周辺を歩きました。山を歩きながら、京北の木々は平安京の町を作り、木工や漆などの文化を生み出してきた歴史を知り、豊かな自然を求めて移住してくる人たちがいます。

 その風景が北陸新幹線延伸という不必要な公共工事によって壊され、住んでいる人たちの生活や命を脅かすと思うと吐き気がします。「しゃーないやんか」で済ませてはいけない。本当に必要なのか、どうしてこのルートなのか、もっと議論を重ねて欲しい。

 京都府下の山にトンネルを掘り、京都市内の地下40㍍を走る新幹線が、今の時代に必要ですか? そんなエネルギーとお金があるなら、もっと必要なところに回すべきだと思うのは普通じゃないでしょうか。

 府知事選挙の争点と聞き、期待しましたが、投票率の低さに唖然としました。「人ごと」じゃないはずです。山を壊し、地下水を汚染するかも知れない。残土を積んだトラックが自分の家の横を、毎日何百台も通ったら黙っているのか、子どもの危険もわがこととして、想像してほしい。山と川、海はつながっています。取り返しのつかないことをすれば、子どもたちにその〝つけ〟がいくことを考えて欲しい。

京北の山林で漆を植樹する堤さん(中央)