水道事業の広域化や民営化を進める改定水道法(19年10月施行)のもと、府は府営水を供給する府南部の10市町(宇治、城陽、八幡、京田辺、木津川、向日、長岡京の各市と久御山、精華、大山崎の各町)で、浄水場の統合計画など水道事業の広域化の議論を進めています。3月の検討部会では、府内市町の浄水場を最大で12カ所統合する案を提示。府内での水道事業の広域化、民営化への道を開くもので、各自治体の日本共産党をはじめ、幅広い政党や市民から懸念と見直しを求める声が上がっています。

 府は3月24日に「新・京都府営水道ビジョン」の第3回検討部会(部会長・西垣泰幸龍谷大教授、9人の有識者で構成)を開き、浄水場の統廃合を行うケースを2案提示。浄水場を現在の21カ所から、ケース①では9カ所、ケース②は13カ所へ削減する案を出しています。

 府南部の10市町では、各市町の地下水(自己水)を水源とする18浄水場と、府が運営する河川を水源とする3浄水場をつなぎ、自己水と府営水をブレンドして各家庭などに水を供給しています。同部会の案では、大幅に市町の自己水を廃止することになります。

 同「ビジョン」は、水道施設の老朽化や人口減少による水需要の減少などに対応するため、水道事業の広域連携推進などを目指すもの。同検討部会では、今年9月ごろに中間案を発表し、府がパブリックコメントを募集するなどし、来年2月頃までに最終取りまとめを行い、新ビジョンを公表する予定です。

 府の府民環境部公営企画課の担当者は、今回示した浄水場の統合案について、「あくまで府の検討部会での提案。今後、関係市町や市民の意見を聞き、検討していきたい」としています。

自己水守る運動広げる

 府のこうした動きに対し、府南部の住民らが3月20日に「水道広域化・民営化を考える京都南部の会」を結成。超党派の議員や市民運動のメンバーが呼びかけ人として参加し、運動を展開しています。

 今回の府の統合案の両ケースで、自治体内の全浄水場の統合が提案されたのが、木津川市と、久御山、精華の2町です。

 元木津川市議で、「南部の会」呼びかけ人の呉羽真弓さんは、「府営水道の供給を受けている木津地域で、一つしかない浄水場の統合案が出されています。多くの住民がこの中身を知らない。浄水場がなくなり、広域化する問題点を多くの人に知らせ、自己水を守る取り組みを広げたい」と話します。

 また同会呼びかけ人の松尾憲・久御山町議は、府が進める水道広域化の押し付けについて、「これまでも府は過大な府営水量を市町に押し付けてきた。公共の財産である自己水を守るためにも、多くの人に今の問題点を知らせていきたい」と語ります。

 日本共産党の各議員団は、府の府営水の押しつけや広域化を進めるやり方を批判し、自己水を守る論戦を展開してきました。

 久御山町の巽悦子町議は「久御山町は地下水が豊富な地域です。府営水優先ではなく、自己水中心の水道事業に変えていくよう府に求めていきたい」とし、精華町の佐々木雅彦町議は「町としても自己水を全てなくすという議論はこれまでなかった。問題を知らせ、自己水を守る取り組みを広げたい」としています。

 乙訓地域の長岡京と向日両市、大山崎町では、長年、府の過剰な建設負担水量を削減し、地下水優先の水道に切り替えるよう求めて市民運動が展開されてきました。今回の統合ケース①では、3市町の浄水場の統合案が提案されています。

 「長岡京の地下水を考える会」の林昭男代表は、「それぞれの自治体にある水源を使用することがサステイナブル(持続可能)で環境に良いことが証明されています。府による府営水の押しつけではなく、自己水を守る水道事業に転換していくべきです」と話します。

自然災害・水質汚染の対応は「多水源」でこそ

日本共産党府議・水谷修さん

水谷修府議

 府の広域化計画推進は、水道事業の広域化や運営権の民間企業への売却(コンセッション方式)を推進する改定水道法に基づくものです。

 府営水(河川を水源にした、宇治、木津、乙訓の3浄水場)が供給されている府南部では、府営水道と各自治体との施設統合とともに、事業体を広域化する議論が進められています。

 今回、府が示した2つのケースでは、自治体の浄水場(自己水)を大幅に統合するものです。各自治体に対し、老朽化した水道施設の改修費用負担など財政的課題があることを示し、府営水中心の水道事業への転換を狙っています。

 しかし、各地の地下水を中心とした「多水源」の方が災害や水質汚染などのリスクにも対応しやすいとされています。河川の表流水である府営水には、カビ臭の発生や汚染物質などの水質事故が広域で起こる危険性があります。

 全国的には、水道事業の広域化や民営化が進められ、水道料金引き上げや、民営化によって情報が非開示にされる問題などが起こり始めています。

 改定水道法のもとで広域化・民営化を進めるのではなく、自治体へ自己水維持への財政支援を行い、「安心で、おいしい」地域の自己水を守る施策へ転換すべきです。