武装勢力のタリバンが制圧(2021年8月15日)したアフガニスタンから、自衛隊機で国外退避したジャーナリストの安井浩美さん(共同通信社カブール通信員)が昨年12月23日、京都市東山区の京都女子大学で、アフガニスタンの現状について講演しました。

 同大学の市川ひろみ教授のゼミ「平和研究Ⅰ」の授業の一環で、生徒らが熱心に聞き入りました。

 安田さんは、2001年の米国同時多発テロの直後、アフガニスタンに入国。通信員として移住し、個人レベルで子どもの教育支援や、刺繍など縫製のクラフト工房を立ち上げて女性のサポートに取り組んでいます。

 アフガニスタンの反政府勢力タリバンが大統領府を占拠した日(8月15日)の街中の様子や空港が国外退避者であふれ、混乱した当時の状況について報告。空港での混乱は、20年前のタリバンによる支配の恐怖と将来の生活の見通しが持てなくなったことで、貧困層が国外に出るチャンスと考えたことによると解説し、「家族離散の状態が起きている」と話しました。

 加えて、現地に戻った11月には、食料配給や現金配給がおこなわれており、「タリバンの下で女性は働けず、公務員に給与が支払われないのでなり手もない。経済が止まっている」と経済破たんの状態を伝え、子ども病院では栄養失調の幼児、産科では早産が増えており、貧困と命に関わる重大な事態が進行していることを紹介しました。

 また、長年、親交のあったペシャワール会の故・中村哲医師との思い出や中村さんの顔が描かれた壁画が消された無念も語り、「すごいショック。今も中村さんの光景を思い出すとやるせない気分になる」と述べました。

 アフガンの人々は、長引く戦闘やテロ、コロナ禍で我慢を重ねた上にタリバンが制圧し、疲弊した状態にあるとし、「今の状態を変えられるのは国際社会。(非軍事で)タリバンにプレッシャーを与えて変えるしかない」と話しました。