総選挙の投票日(31日)を前に、「投票所はあっち」「この1票で変わるのは自分かもしれない」などと書いたカラフルなボードを掲げて街を歩き、投票を呼びかけるユニークな取り組みが全国各地で広がり、注目を集めています。発起人は映像作家の丹下紘希(こうき)さん(52)です。ミスターチルドレンをはじめ数多くの有名ミュージシャンのミュージックビデオを手掛け、現在、京都府亀岡市で暮らします。丹下さんは「投票できるよ。1票が力を持っているよ」というメッセージで、「社会は変わらないとあきらめている人を励まし、背中を押したい」と意気込みを語ります。

 取り組みは名付けて「投票所はあっち!プロジェクト」。投票を呼びかけるメッセージが書き込まれた矢印を専用サイトから自由にダウンロード。矢印をプラカードのようにして街中を歩いたり、自宅に張ったりすることで、全国誰でも肩肘張らずに政治参加を促すことを目指しています。今年4月の参院選広島選挙区の再選挙では、丹下さんらの了解を得て、広島弁の「投票所はあっちじゃけぇ」プロジェクトとなり、若者らがボードを持って街を練り歩き、話題となりました。

 丹下さんが「プロジェクト」を始めるきっかけとなったのは、2016年7月の参院選でした。選挙は、安倍政権による秘密保護法や安保関連法(戦争法)の強行、そして改憲の危機の中で行われました。「これまでの投票率なら5割程度。これでいいのか。そもそも投票とは何かを考えてほしい。自分たちには自分たちの社会をつくっていく権利があることを知ってもらうことが大事じゃないか」。丹下さんは、そんな思い可視化しようと始めたと当時を振り返ります。

 「3・11」東京電力福島第1原発事故を機に、東京から福岡、京都へと移ってきました。今回の衆院選では、原発問題をはじめ気候変動、貧困と格差、政治とカネなどいくつもの争点があるといいます。「少なくない人たちが政治や社会に無力感を感じている。でも、投票は民主主義を自分たちの手に取り戻す行為。一人ひとりの力を信じてほしい」。

 「投票所はあっちプロジェクト」の専用サイト(https://www.go-vote.jp/)。同プロジェクトでは、活動の中に「政治的意見や主義主張、あらゆる分断、すべてのハラスメント」を持ち込まないこと、持ち込み歓迎は「寛容と笑顔」としています。