府と懇談する化学物質過敏症に苦しむ府民ら。左端は日本共産党の島田府議

 近年「香りが続く」「におわない」などの触れ込みで宣伝されている柔軟剤や合成洗剤など香りつき製品から揮発する化学物質を吸い込むことで頭痛や吐き気、めまいなどの「香害」とも言える健康被害を訴える化学物質過敏症の人が増えています。京都府在住の同症に苦しむ人々が9月9日、京都府に対策を求め、懇談しました。

 京都府で対応したのは健康福祉部薬務課と健康対策課。要望したのは、京都市中京区で飲食店を経営する中塚智彦さんら5人。症状も多様です。

 料理店を営む女性は、洗剤の香りなどによりシェフとともに発症。「熱した鉄の棒をこめかみに押さえつけられる」ほどの頭痛を感じ始め、吐き気、下痢、睡眠障害の症状も起きるように。

 府南部に住む女性は、高校に通っていた娘が発症。クラスメートが強い香りの柔軟剤を使い始めたことが原因。急に、頭痛、腹痛、吐き気、呼吸困難、目の充血なども起こり、退学を余儀なくされました。

 乙訓地域在住の女性は、急に気絶し救急搬送先の病院の医師から化学物質過敏症だと告げられました。重症化し、食事もあまりとれなくなり、栄養点滴を受けるようになりました。

 博物館で働いた女性は、資料保護のための殺虫剤や殺菌剤が原因で発症。退職せざるを得ませんでした。

 中塚氏らは、「もともと基礎疾患があったり、在宅医療・介護が必要な社会的弱者ほど、なかなか外に出られず重篤化するケースが多く、実情を訴えることも困難。対策は命に関わる喫緊の課題」と強調。それぞれの症状を訴え、国も啓発用ポスターを作成し、近畿の他府県も対策が進んでいるなかで、京都府に▽相談窓口の設置▽被害実態の掌握▽同症についての啓発▽学校など公共機関での対策―を求めました。

 府の担当者は、「初めて生の声を聞き、深刻に受け止めた」「他の部署とも連携し対策を考えていきたい」と述べました。

 懇談には、日本共産党の島田敬子府議も参加しました。

消費者庁、文科省、厚労省、経産省、環境省連名の啓発用ポスター

化学物質過敏症■「香り」付加製品で被害顕在化/“第2の受動喫煙”とも

 日本では、2000年前後に消臭・除菌ブームがおこり、近年は人工的に強い香りを添加した生活製品が増え、10年頃には香料や消臭成分を包み、香りを持続させるためにマイクロカプセルも多用されるようになりました。

 NPО法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議によると、香料には神経毒性、変異原性、発がん性、片頭通やぜん息を起こしやすいものがあるほか、マイクロカプセルのまくはプラスチックで出来ており、微小なカプセルや破片はマスクを通過して肺の奥まで入り、ぜん息、気管支炎、呼吸器系疾患、肺がんを引き起こす可能性があるほか、鼻から吸い込んだ場合、脳にも影響を与える場合があるといいます。

 10年前後から国民生活センターに、強い香りにより体調を崩したとの相談が多く寄せられるようになってきたとされています。

 香りの強い製品を毎日使っている人はそのにおいに麻痺する傾向があり、においで苦しむ人の状況が理解出来ないことから、喫煙者と非喫煙者の関係に似ているとして香害は「第2の受動喫煙」との指摘もあります。