最低賃金1500円以上への引き上げを求めてデモ行進する京都総評のメンバーら(7月19日、京都市内)

 京都地方最低賃金審議会は8月5日、京都府の最低賃金について、時給を28円引き上げ、937円とする(効力発生予定日は10月1日)と答申しました。京都総評などの労働組合からは、「時給1500円をめざすなか、まだまだ不十分」と評価されています。労働問題に詳しい中村和雄弁護士に、最低賃金をめぐる運動と大幅引き上げが求められている状況について聞きました。

中村和雄弁護士

■先進諸国の中で低水準変わらず

■生計費に差なく、全国一律でこそ

 府内の最低賃金が937円となりましたが、生活実態からみてもまだまだ不十分で、1500円以上に引き上げる必要があります。京都総評はじめ全国の労働組合や、日本弁護士連合会、京都弁護士会も最低賃金の大幅引き上げを中小企業支援とセットで行うべきと求めています。

 京都ではそうした運動が広がる中、府議会6月定例会で、コロナ禍での緊急経済対策と最低賃金引き上げを国に求める意見書が全会一致で可決される状況となっています。

仏・独・英は時給1300円台

 今年度の改定で全国の最低賃金の加重平均は時給930円となりましたが、先進諸国と比べても低い水準です。コロナ禍で引き上げを行った国々で、フランスは時給10・25ユーロ(約1333円)、ドイツでは時給10・45ユーロ(約1359円)、イギリスで8・91ポンド(約1354円)となっています。フルタイム労働者の賃金の中央値に対する最賃の比率は、フランスが62%、韓国が59%、イギリス54%に対し、日本は42%という水準にすぎません。

 全労連はこの間、全国の県庁所在地などを中心に最低生計費試算調査を行っており、地方でも都市部と変わらない生活費が必要なことが明らかになっています。

 例えば、東京都北区で男性ひとり暮らしの月額生計費は19万7704円(時給換算で1664円)で、京都市は19万6190円(同1639円)です。一方で、長野市では20万1413円(同1699円)、大分市では20万577円(1725円)と、地方でも東京や京都市を上回っています。これは住居費は都市部が高額ですが、地方では移動手段に自家用車が必須となっており、その維持などで都市部を上回る実態があることが分かりました。

 現在の最低賃金は東京が時給1041円と最も高く、京都市は937円、長野県877円、大分県822円となっており、最も低い沖縄県では820円と大きな差があります。

 イギリス、フランス、ドイツ、韓国などでは全国一律の最低賃金が導入されています。日本のように地域別の最低賃金が導入されているのは、カナダ、中国、インドネシアの4カ国のみ(米国では州ごとの最低賃金の他に連邦最低賃金が実施)で、日本よりも国土の広大な国ばかりです。日本は最低生計費は全国ほぼ同じで、最低賃金は全国一律にすべきです。

社会保険料事業主負担の減免有効

 引き上げのためには、中小企業への支援が必須です。特に社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減することが有効だと考えており、最低賃金引き上げとセットで行うべきです。

 コロナ禍で多くの労働者が仕事を失ったり、仕事のシフトの激減、非正規雇用の多い女性が困窮する事態が生まれています。今こそ最低賃金を引き上げることが労働者の生活を支えます。

 さらにウーバーイーツなど雇用によらない働き方や、シフトが会社の都合で減らされる問題、ダブルワークや低賃金の長時間労働などさまざまな問題が生まれており、月150時間程度の労働時間(週休2日で1日約6・8時間労働)でも普通に暮らせる最低賃金を保障することが重要です。