京丹後市教育委員会が小学校統廃合計画案を市議会6月定例会に提出しようとしている問題で、対象校区の住民団体が3月27日、同市内の2会場で集いを開き、地元住民ら約80人が参加しました。和光大学の山本由美教授が講演し、市教委が強調する小規模校の「課題」には学問的裏付けがないことなどの問題点を指摘しました。

 主催したのは、対象校の吉野小学校がある同市弥栄町の「吉野小学校の統廃合を考える会(仮称)」、対象校の宇川小学校がある同市丹後町の「宇川小学校の統廃合を考える有志の会」です。

地方債期限迫り駆け込みの様相

 山本教授は、学校統廃合は国により政策的に推進されており、統廃合にも使える地方債の期限が21年度までであるため、全国で「駆け込み統廃合」の様な事態が起こっていると指摘。一方で、新型コロナ感染拡大の下で過密にならない小規模校の「良さが見直されている」と強調しました。

 京丹後市の統廃合計画について、計画案や、計画案のもとになった市教委方針に、推進する学問的な根拠や合理的な理由が示されておらず、10年前に実施された統廃合の十分な検証結果が示されていないなどの問題点があると指摘しました。

 他にも、市が学校の「適正規模」の法令上の根拠としている「学校教育法施行規則」の理解に誤りがあるとともに、適正規模そのものの設定が「都市部より大きく、(地域の)実態に合っていない」と述べました。

 その上で、市教委が小規模校の中でも最優先に掲げる「複式学級の解消」について、学問的には教育効果と学校規模の相関は認められていないと強調しました。

 また、1学級あたりの人数は市町村が決定できるため、小人数となっても複式学級を採用しないことも市の判断で可能であると指摘しました。

 また、全国の学校へのアンケート調査から、ある複式学級のある小規模校は他の学校に比べ、自発的に学習に取り組む力が強く、教師からのサポートも手厚く、ストレスが少ないという結果を紹介。その上で、「3人ぐらいの親が本気で立ち上がり、踏みとどまった事例もある。この計画に屈せず頑張ってほしい」とエールを送りました。

 弥栄会場では、宮津市で複式学級を担任していた元教諭のメッセージ動画が上映されました。元教諭は、個別指導のように児童に接することを意識してきたことを振り返り、「複式だから(学力の面で)弊害があったとは思っていない」と語りました。

 同会場からは、「自分の子どもは、吉野小学校で落ち着いて、丁寧にみてもらえた。今の吉野小でいいのではないか」という保護者の感想が出されました。

 丹後会場に参加した母親は、「学力の面からいうと丁寧にみてもらえる小規模校を残した方がいいのかなと思った」と話していました。