京丹後市の米軍レーダー基地をめぐり、同市の中山泰市長はこのほど、米軍関係者の交通事故の情報提供などについて要請文書を岸信夫防衛相に提出しました。同基地受け入れに際して当時の防衛相と合意した「10条件」が守られているか、市として検証した上での要請ですが、日本共産党京丹後市議団は、「米軍の運用が最優先される根本問題に踏み込んでおらず、不十分だ」と指摘します。

 14年12月の同基地の本格運用後、交通事故の未報告や基地内の発電機の連続稼働など米軍による「約束違反」が繰り返されてきました。

 交通事故報告をめぐっては当初、防衛省が米軍関係者の加害・被害を問わず、概要を含めて全件報告を約束し、実施されてきました。しかし、18年2月4日の事故を最後に1年以上にわたり報告が途絶え、防衛省は19年3月に米側からの申し出を受け、一方的に「重大事故を除き件数のみ報告」とルール変更。

 しかし、変更ルールのもとでも、軍属による酒気帯び運転で物損事故(昨年6月)という「重大事故」が発生したにも関わらず、米側から情報提供は行われませんでした。

 こうした事態を受け、中山市長は報告ルールの再検討を要求し、昨年12月16日に防衛省が新ルールを公表。新ルールでは、自衛隊員の公表基準にならい、飲酒運転(酒気帯び含む)、ひき逃げ、無免許運転などについては速やかに情報提供し、公表するとした一方で、車両や標識との接触、側溝への脱輪など18事例については「件数のみ」を報告するとしていました。当初の全件報告とはなりませんでしたが、同市長は新ルールでの運用に合意しました。

 今回の要請では、発電機の昼夜連続稼働の続発、レーダー不停波によるドクターヘリの遅延など、数々の約束違反が繰り返されてきたことを踏まえ、▽事故情報の提供で疑義が生じるケースがあれば検証し、必要な改善を行う▽発電機稼働について、地元への事前連絡を徹底し、止むを得ない場合も平日中に限定するよう最大限努める—などを求めています。

 日本共産党の倉林明子参院議員の要求で開示された、市長要請に対する防衛省の回答は、「京丹後市からのご要望を真摯に受け止め、関係機関と連携・協力し、引き続き、地元の安全・安心の確保に取り組んでまいる所存です」というものです。

 市長要請について田中邦夫市議団長は、「日米地位協定で米軍の運用が最優先されるもとでは、あくまでも米軍への『お願い』としかならない。結局、事故の全件報告という当初の約束は守られないままだ。市長は、この根本問題に踏み込み、問題が解消できないならば、基地の撤去を求めるという立場に立つべきだ」と話しています。