署名に取り組む(右から)橋本さん、山口さん。左端はAさん

「子育て支援」の責任どこに

 例年通り、保育所に入れてほしい――京都市が市立聚楽保育所(中京区)での新規入所を一部拒否している問題で、入所を希望する在園児の保護者らが、4月以降の募集再開を求める署名運動を広げています。

 署名を始めたのは、2月1日。「聚楽保育所の新規入所再開を求める会」を立ち上げ、21年度については例年通りの募集を再開するよう京都市長に求めています。オンラインと紙媒体で広げ、約600人(22日現在)の賛同が寄せられています。

 京都市は、2022年4月から同保育所の民間移管を予定していますが、昨秋(10月末)、運営に名乗りを上げた民間事業者の辞退で、民間移管はいったん白紙となり、「実施時期については、検討中」としています。

 受け入れ方針を変更したのは、保護者からの新規入所申し込みを受けた後の12月。すでに12人の入所希望があるにもかかわらず、そのうちの0・2・4・5歳児の新規入所に応じないと言い、保護者にとっては、突然、入所拒否を告げられた形です。担当課に直接、要請もしてきましたが応じる意向がないため、署名に踏み切りました。

聚楽保育所を紹介する京都市のホームページ

 途中入所で、4月から引き続き0歳児クラスを希望した山口茜さん(43)は、わが子(4月生まれ)の同級生の募集がない環境に不安を抱きます。「下の月例の同年の子と関わるのは大事な成長の機会だと思いますが、どんな保育環境になるのか、はっきりした説明はありません」

 第2子(10月生まれ)の育休中で途中入所を予定している橋本和美さん(40)は、突然の入所拒否によって、きょうだいと一緒に通えない子、退職に追い込まれる保護者も出かねないと述べ、「希望する人の入所をかなえてほしい。子育てを応援するのが市の責任ではないのでしょうか」と訴えます。

 4月からの職場復帰を目前にして、第2子(7月生まれ)の入所を希望したAさん(40代)は1月、一部の年齢の子どもを受け入れないのは児童福祉法などに違反するとして京都地裁に提訴し、市に入所を認めるよう求めています。

 勤務との関係で、午前7時~午後7時までの開所時間の条件が必須ですが、聚楽保育所に代わる保育所がありません。Aさんは、「市の言う『子育て環境日本一』が、自己満足の言葉ではなく、本当に子どものための支援であってほしい」と話しています。

 オンライン署名には、「子育て日本一を自称しながら、自ら待機児童を生んでどうするのか」、「突然の入所拒否はひどすぎます」などと賛同者がコメントを寄せています。

 「聚楽保育所の新規入所再開を求める会」のオンライン署名(3月15日締め切り)はhttp://chng.it/QRwd5vMz5Gから。

受け入れ拒否は重大 市保連が門川市長に緊急要望

 京都市保育園保護者会連合協議会(市保連)は昨年12月、京都市が聚楽保育所について、新規入所を一部拒否したことに対してただちに、「京都市営聚楽保育所の2021年度4月入園についての緊急要望」を京都市長宛に行いました。入園申込後の受け入れ方針の大幅な変更は、子育て支援の観点からは非常に重大な問題があると指摘し、聚楽保育所に申込みを希望したすべての子どもが入園できるよう対応を求めました。

田中智子さん
市営保育所の役割発揮こそ■市保連会長・田中智子さん

 保育所は、子どもの預かり施設ではありません。子どもたちにとっては育ち・生活の場であり、親にとっては仲間・社会とつながる場です。待機児童対策として年齢を区切って受け入れる今回の発想は、預かり施設としてのみ位置付けており、子どもも大人にとっても豊かなつながりが断ち切られるのではと危惧しています。加えて、市営保育所は、公的機関の一つであり、子どもの虐待や支援が必要な子育て家庭の情報をキャッチし、必要な公的支援につなぐ重要な役割を果たしていると思います。コロナ禍で追い詰められた子育て世帯のニーズの把握のためにも、公的役割の発揮が期待されるときではないでしょうか。