第2次大戦中、中国東北部で、捕りょなどを使った生体実験や、ペスト菌などを使った生物兵器の実験・開発を行っていた関東軍防疫給水部(部隊長は、京都帝国大学医学部出身の石井四郎中将、本部の通称は「731部隊」)について、GHQ占領下、厚生省外局(現・厚生労働省)が作成した公文書が国立公文書に保管されていたことをこのほど、西山勝夫・滋賀医科大学名誉教授らが発見、6月19日に公表しました。同部隊の構成、隊員の所属する支部、隊員数、敗退経路などが詳細に記された公文書確認は今回が初めて。

 問題の公文書は「関東軍防疫給水部部隊概況平29厚労」。米ソの緊張が高まり、朝鮮戦争に突入した1950年から51年にかけて作成され、2017年度に厚生労働省から国立公文書館に移管されたもの。西山氏らが請求し、今年3月に納品された41㌻分の分析を進めてきました。

 本部と林口、牡丹江、孫呉、海拉爾、大連の5支部、ペスト防疫隊が明記され、部隊長、部隊の変遷、機構などについても書かれています。「所望の成果」「特異事項」の記述はあるものの、何を「所望」し、なぜ「特異事項」をあげ、調査したかは不明。

「細菌の研究生産等を実施していた」(防給本部)、「終戦時迄主として細菌の研究及生産に住(ママ)じていた」など細菌の研究・生産を行っていたことを裏付ける記述も見られます。

 敗戦前後の支部ごとの行動を記した図や表、個人名などを記した細部表などもあり、組織図や隊員の所属まで記載されているものは今回が初めてです。いずれも、「入ソ」(旧・ソ連に収容)にこだわった記述になっています。本部と5支部の人数統計表もあり総計3262人としており、公文書で名簿を基にした人数が明らかになったのは初めて。

 西山氏は、本部と大連支部の行動経過や隊員の所属などを記載した詳細な記録が公開資料に含まれていなかったのは「整合性に欠け、不自然」とし、本来あるべき資料が抜き取られたり、隠蔽されている可能性も示唆しました。