感染防止のため、給食中の会話の禁止などが呼びかけられた教室内

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で休校していた小中・高等学校が6月から(府北部などは5月から)順次再開しています。感染防止のために、児童・生徒にはマスク着用や手洗いの徹底が求められるのをはじめ、「7時間」授業や行事の延期・中止など、学校生活が大きく変化しています。教職員や保護者からは「感染症対策徹底のために少人数学級が必要」「7時間授業の押し付けはやめて」と声が上がっています。

京都市…40人学級のまま、7時間授業も

 「『いただきます』は声を出さずに、心の中で言ってくださいね」―京都市内の小学校で給食が始まった8日、京都市右京区の西京極小学校2年生の教諭が手を合わせ、子どもたちに呼びかけました。子どもたちは黙って手を合わせ、マスクを外し、黙々と給食を食べ始めます。

 黒板には、「前を向いて話をしない」「立ち上がらない」と、給食時の注意事項のカードを掲示。京都市は11日まで半数ずつの登校のため、この日は15人ですが、2人の教職員が休むことなく動き回り、児童が極力他人の食器に触れないよう工夫しながら、配膳や回収作業に追われました。

 感染拡大防止のため、学校の生活スタイルが大きく変化しています。マスクの常時着用、毎朝の検温、頻繁な消毒・換気、こまめな手洗いなど、現場の教職員はこれらの徹底のため、かつてない対応に追われています。

消毒・換気・給食…まったく人手が足りない

 京都市内で20年以上のキャリアのある小学校の女性教諭は、「ぞうきんがけなどの拭き掃除は子どもにさせず、教員がします。その他の消毒作業や検温など今までにない業務が急増しています。給食時の配膳・回収や消毒なども30人学級では不可能。まったく人手が足りません。すぐに少人数学級にしてほしい」と声を上げます。

 運動会や、修学旅行など宿泊行事の延期・中止の検討をはじめ、飛沫感染の恐れのある音楽や体育などの実技科目をどうするのかなど、課題は山積みです。

 中学校で運動部の顧問を務める男性教諭は、「まもなく部活が再開する予定ですが、全てのボールの消毒はもちろん、プレイ中の感染症対策をどうすればいいのか。試合もなくなり、スポーツ推薦を目指していた子など、目標を失っている子もいます」と話します。

登校する小学生(京都市中京区)

 休校で遅れた教育課程をどうするのかも大きな課題です。京都市教育委員会は1日、小中学校校長宛の文書で、今年度の教育課程について、「次学年や次々学年に指導を移して教育課程を編成することは、本市立学校においては基本的に認められない」とし、授業時間を5分削減して小学校40分、中学校45分とし「7時間授業や補習などを適切に実施」するよう指示しています。

 京都教職員組合の中野宏之書記長は、「長期休校やコロナ対応でストレスを感じている子どもたちに過密な授業を行うべきではありません。しっかりと子どもに寄り添った教育をすべきです。市教委の二転三転する方針と、7時間授業の一律押し付けには、職場からも疑問と怒りの声が寄せられています」と話します。

 「子どもたちは大声で話したらアカン、近づいたらアカンと言われ、心の整理もついていません。無理な課題や詰め込み授業はやめてほしい」と話すのは、中学1年生の息子を育てる三角令子さん(山科区)。休校中に膨大な課題に追われる様子を心配していました。

 「9科目の宿題が出され、朝から晩まで勉強していた日も。学校は大切なコミュニティーの場です。先生を増やして、40人学級を半分の20人にすべき。先生を増やし、子どもと触れ合う時間を作ってほしい」と訴えます。

 府内では小学3年生以上は40人程度学級(自治体ごとに差あり)で、教室の広さに余裕がなく、子ども同士の距離がとれないことも問題です。前述の男性中学教諭は、「半数の20人なら距離もとりやすい。本当に感染症対策を行うなら少人数にすべきです」と話します。

 京都市PTA連絡協議会役員会は、5月半ばに市立学校・幼稚園の保護者を対象に、インターネットでのアンケートを実施し、2万1527人が回答。ネット上で公開された自由記入欄では、学習の遅れを心配する声とともに、「集団感染になるんじゃないかとまだ怖い」(小1)、「学びよりも命優先。遅れても命があればまた学び直せる」(小3)、「修学旅行に安心して行かせたい」(小6)などの声も寄せられました。

「教員10万人増を」「現場の自主性保障して」共産党が緊急提言

 日本共産党は6月2日、学校再開にあたって、子どもたちの学び、心身のケア、安全を保障するための緊急提言を発表しました。

 子どもたちは、学習の遅れと格差の拡大、かつてない不安や心身のストレスをため込んでおり、一人ひとりを大切にする手厚い教育が必要だと強調。土曜授業や7時間授業、夏休みや行事の削減などで授業を詰め込むやり方ではなく、学習指導要領の弾力的な運用で、学習内容の精選、教科横断や次年度以降で学ぶ方法を呼びかけています。

 学校の感染症対策では、身体的距離の確保と矛盾する40人学級ではなく、分散登校で行われた20人程度の授業を続けるため、教員を10万人増やし、教室確保のためのプレハブ建設、公共施設の利用を提案。養護教員、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカー、学習や清掃・消毒・オンライン整備のための支援員の増員も政府の責任で保障するよう求めています。

 憲法や最高裁学力テスト判決から、教育課程編成権は個々の学校にあるとして、目の前の子どもたちのために何がいいかを話し合って決めていく学校現場を育てることが未来の希望ある学校をつくる大きな力になるとしています。