「国民主権」→園児と交流する天皇

「平和主義」→被災地で活動する自衛隊

 新型コロナウイルス感染症拡大防止のための臨時休校期間中、京都市教育委員会が共同企画し、KBS京都テレビで放送された小中学生向けの学習系特別番組で、小学6年生「社会」で扱われた「わたしたちのくらしと日本国憲法」(4月21日放送)をめぐって、京都市教職員組合や市民団体が、「憲法の原則を子どもたちに理解させるうえで、適切だったか」と疑問を呈し、同市教育委員会に相次いで要請しました。

 この放送回では、「日本国憲法の3つの原則」として、「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」の言葉が紹介された後、3つの写真を示して、そのどれが「3つの原則」にあてはまるかを考える問題を設定。東日本大震災の被災地で活動する自衛隊の写真に「平和主義」、保育園児と交流する天皇の写真に「国民主権」を対応させる場面があります。

前文、成立過程の説明も省略

 市民団体の「ウチら困ってんねん@京都」は4日、市教委に抗議と改善を求める要請書を提出した後、市役所内で会見し、憲法の三原則の定義の説明も省略され、対応させる写真パネルの選択も不適切だと指摘。「教科書にはほかの写真も掲載されている中で、なぜこれらの写真が選択されたのか」と疑問視しました。

 市教委には、▽日本国憲法成立の歴史的過程や三原則の説明が省略された理由▽天皇と「国民主権」、自衛隊と「平和主義」との関連付けは情緒的で不適切。パネル選択の理由の説明▽一斉休校後の諸問題、番組についてなど、保護者・市民と教育委員会との「意見交流会」の開催―など4点を求めています。

記者会見で見解を述べる「ウチ困」のメンバーら(6月4日、京都市役所)

 会見したメンバーらは、「憲法前文の理解なく進められた衝撃は大きい」(6年生の保護者)、「テレビの電波に乗せた責任も問われる」などと述べました。

 京都市教組は、「日本国憲法を正しく理解できる授業づくりを」と題する見解を5月7日に発表し、市教委に申し入れました。

 見解では、学習指導要領に示されている同単元の内容や、教科書(東京書籍)に、「国民主権」は「政治の主人公は国民」、「平和主義」は「二度と戦争をしない」と書かれ、他に資料もあることなどをあげ、「授業動画の内容は日本国憲法の正しい理解につながらないものだと言わざるを得ません」と指摘。授業が指導主事によって行われ、テレビ放送された点も軽視できないとして、授業動画が批判的に視聴され、教育研究会、学校現場で大いに議論されることを呼びかけるとしています。

 同特別番組は、家庭学習支援として、京都市教委、京都新聞社とKBS京都テレビが共同制作した「がんばれ! 京都の子どもたち~オール京都で学びの支援を」。各学年、教科ごとに4、5月の教科書の内容を用いて、市総合教育センターの指導主事らが解説する1単元約15分の番組で、4月(30回)と5月(80回)に放送され、YouTubeで6月14日まで配信されました。