世界遺産・下鴨神社(京都市左京区)の境内、「糺の森」でのマンション建設計画に対し、周辺住民らによる3年余の反対運動をまとめた記録集『糺の森 未来のために』(A5判143㌻、800円+税、ほむぎ出版)がこのほど、出版されました。

 発行したのは、運動を担った「糺の森 未来の会」と「世界遺産・下鴨神社と糺の森問題を考える市民の会」。中心メンバーの中島晃弁護士ら9人の住民が執筆しました。

 下鴨神社の当初計画では、世界遺産のバッファゾーン(緩衝地帯)でのマンション建設と合わせて、世界遺産のコアゾーンとなる敷地内に、大型倉庫建設を予定していました。住民らは、両計画に対し、糺の森の貴重な自然や世界遺産を守ろうと立ち上がり、運動を展開。マンションは建設されたものの、大型倉庫建設は現在もストップしたままです。

 記録集では、15回に及ぶ署名活動や住民訴訟、国際署名1万4000人分を集めてパリ・ユネスコ本部を訪れたことなど、粘り強い活動や主張、運動に込めた住民の思いを紹介。その一方で、住民に会うことさえ拒否し続けた下鴨神社やマンション計画を許可した市の問題点を告発しています。

景観保全へ市条例強化も

 巻頭には、下鴨神社の近くで生まれ育った同志社大学名誉教授の鰺坂学さんが「心ある市民や住民の活動・運動の力こそが、美しい京都の魅力を守っている」と、住民を激励する一文を寄せ、片方信也・日本福祉大学名誉教授らが、同マンション問題から捉えた「景観問題の課題」などについて寄稿しています。

 「未来の会」の共同代表の人見明さんは「住民参加の点で問題あるものの、市の眺望景観創生条例が強化され、下鴨神社など参道から境内を眺めた際の景観も新たに保全対象となるなど、世界遺産を守れと訴えた私たちの運動が実を結んでいます。記録集が、京都の景観保全を求める今後の運動の糧になれば」と話しています。    
    
 問い合わせは℡075・723・1869(人見)まで。