〈ウルトラマン〉描き、現実と苦闘 『光の国から僕らのために―金城哲夫伝―』劇団民藝公演、12日・府立文化芸術会館
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などの脚本を手がけた沖縄出身の金城(きんじょう)哲夫(1938~76)の光と影を追った劇団民藝公演「光の国から僕らのために―金城哲夫伝―」が9月12日、京都市上京区の府立文化芸術会館であります。その後、沖縄公演になります。
金城哲夫は、中学卒業まで沖縄で過ごしました。円谷プロダクションに就職後、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の脚本を担当し、怪獣ブームを起こしますが、その後、シリーズは低迷し沖縄の本土復帰3年前の1969年、失意の末に帰郷します。
舞台では、帰郷した金城が、沖縄のラジオ番組で、米軍基地の負担軽減のために、自衛隊の役割強化に触れ、県民から批判される場面で始まります。
帰郷後に依頼されて脚本を書いた最後のテレビ作品「帰ってきたウルトラマン」11話「毒ガス怪獣出現」(71年放送)では、米軍基地に貯蔵された毒ガスにより死者が出た事件を取り上げようとしたものの放送環境を考え、米軍を旧日本軍に置き換えて放送したエピソードも紹介しています。
演出に関わった沖縄海洋博(75~76)も県内外から「環境破壊」「経済復興につながらなかった」などの厳しい意見が起こり、閉幕1カ月後、泥酔の末に事故死するなど、金城が沖縄の基地撤去、復興に腐心しながらも、理解が得られず苦悩する姿も描いています。
プロデューサーの金本和明氏は「青春群像を描くとともに、沖縄の現状を知ってもらう作品に仕上げました。沖縄と本土に育ち、両者のかけはしになろうとした金城。沖縄を平和の拠点、ニライカナイ(理想郷)と考え、作品に反映したように思えてならない」と語ります。
午後6時半。5500円、バリアフリー割引5000円、25歳以下3000円。問い合わせ☎044・987・7711(劇団民藝)、075・432・4086(京都民藝の仲間・後藤)。
(写真=円谷プロ文芸室で、少年雑誌の記者から取材を受けるシーン〔初演より〕。〔左から〕雑誌記者、友好珍獣ピグモン、金城哲夫)
(「週刊京都民報」9月9日付より)