年金支給年齢が引き上げられ、定年後の再雇用が企業に義務付けられるなか、会社側から生活できない低賃金や不当な労働条件を提示されることが問題となっています。京都三菱自動車販売株式会社(京都市南区)の社員が、「定年後の再雇用は週1日」など不利な条件を突きつけられ、労働組合で交渉した結果、大幅に条件を改善させました。労働者は「定年後の再雇用で多くの人が苦しんでいる。国と企業は制度を見直してほしい」と話しています。

 再雇用契約を改善させたのは、同社で40年近く働いてきた今村素手二さん(60)です。60歳の定年を前にした昨年夏、会社側は今村さんに「週1日の勤務」などの再雇用条件を示したうえ、「再雇用に関する覚書」を提示。「覚書」では、「身に覚えのないパワーハラスメントがあった」と一方的に認定し、「他の社員にパワハラを行った時」や、「上司に反抗し、業務上の指示命令、計画に従わなかった場合」は、「契約を更新しない場合がある」などとした条件を飲むよう迫るものでした。

 「不当な条件で、年金もなく、週1日の勤務では生活できない」と今村さんは、加入していた労働組合「全日本造船機械労働組合三菱重工支部 工作機械栗東分会」に相談し、会社側と団体交渉。粘り強く交渉を重ね、昨年9月、不当な「覚書」を撤回させ、週5日のフルタイム勤務にするなどの条件に改善させました。

 今村さんは「定年を迎えた多くの労働者がひどい労働条件を受け入れたり、辞めざるを得なかったりしているのではないでしょうか。多くの労働者にこうした事例を知ってもらい、労働組合に相談し、条件が良くなるようにしてほしい」と話します。

■国会で倉林議員が追及

 日本共産党の倉林明子参院議員は国会で、今村さんの事例などを示しながら、定年後の再雇用問題を取り上げてきました。昨年12月、安すぎる賃金など生活できない条件を示された実態を示し、「国が企業に対し、本人の生活の安定を考慮する労働条件にするよう指導すべき」と追及。3月には、同党国会議員団が取り上げてきた、日立製作所(本社・東京都)で「労働日は週1~2日」と条件を示された男性労働者が、週5日勤務を勝ち取ったことが分かりました。

 同三菱重工労組栗東分会の野村政勝副委員長は、「年金支給年齢を一方的に引き上げながら、再雇用の条件は企業任せという、国の制度に大きな問題があります。倉林議員が追及してきたように、定年後も労働者が生活できる賃金を保障すべきです」と話しています。

(写真=定年後の労働条件改善を喜び合う、同労組のメンバーら。左から2人目が今村さん

(「週刊京都民報」5月28日付より)