会場いっぱいの参加者を前に講演する田中さん(10月20日、京都市東山区・清水寺)

 宗教、宗派・教派の違いを超えて平和運動に取り組む日本宗教者平和協議会(日本宗平協、岸田正博代表理事)は10月20日、京都市東山区の清水寺で、「戦後・被爆80年 核兵器も戦争もない世界を・宗教の願い」をテーマにした日本宗教者平和会議を開き、講演とシンポジウム、ミニライブで学び、交流しました。国連軍縮週間に呼応した取り組みで、全国から約180人が参加しました。

 開会あいさつで岸田氏は、宗教者の平和運動の歴史にゆかりのある清水寺での開催にふれた上で、「世界的に軍事化が進むなかで、軍事撤廃、核兵器廃絶という大事なテーマをみなさんと深めたい」と呼びかけました。

 記念講演は、ノーベル平和賞の受賞から1年が経つ日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中煕巳(てるみ)代表委員が「被爆者の運動とノーベル平和賞受賞の意義」と題して行いました。

 田中氏は、長崎での自身の被爆体験、核兵器廃絶と原爆被害への国家補償を求めて証言活動を続けて来た被爆者運動の歴史を紹介し、核兵器を使ってはならないという「核のタブー」を国際世論にしてきた第一人者は被爆者だと強調。

 しかし、核の使用を脅しに使う国が現れる国際情勢の悪化のもとで、「核のタブー」の規範が崩されようとしていることにノルウェー・ノーベル委員会も危機感をもったのではないかと受賞理由の背景を推察し、「核使用禁止の大きな国際的運動を築き直す目的があったと思う」と述べました。

 授賞式(24年12月)の演説でのエピソードとして、原爆被害者に対する補償をしない日本政府を批判した当初の原稿にはなかったスピーチについて、「原爆で亡くなった人々の政府への怒りが私の体の中に魂として入ってきたと思う」と話しました。

 受賞は「日本の反核運動を大きくするチャンス」「被爆者運動を世界中の人に知ってもらう機会」と述べ、核兵器禁止条約を署名・批准するよう日本政府に求める運動、国際的に緊迫する情勢を乗り越えて核保有国に署名させるための運動を呼びかけました。

 シンポジウムは、榎本栄次(日本キリスト教団・西が丘教会牧師)、福家俊彦(天台寺門宗総本山園城寺長吏)、宮城泰年(本山修験宗聖護院門跡門主)、山崎龍明(仏教タイム社社長)の各氏が登壇し、「『宗教者は戦後責任をどう果たすのか』を問う」と題して意見交流しました。

 「平和の祈りを行動の波へ…戦争も核兵器もない真に平和な社会を一刻も早く構築していくために、宗教者は何よりもいのちの尊厳を守り、市民社会と連帯して進んでいく」と表明する、「2025年日本宗教者平和会議in京都アピール文」を確認して閉会しました。

「6・9行動」田中さんが激励

 同会議開催に関連して清水寺山門近くでは、54年前に京教組女性部が始め、現在も継続している「6・9行動」がこの日、特別に取り組まれ、会議参加の宗教者や被爆者らも参加。参拝者に、日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を求める署名を呼びかけました。田中煕巳さんも立ち寄り、行動を激励しました。

清水寺で続けられている「6・9行動」を激励する田中さん(左)