子どもに処方されたリンデロンとヘパリンを手にする綾部市の母親

「命に関わる問題」日本共産党は保険外しに強く反対

 自民、公明、維新の3党が合意し、市販薬と効能が同じ「OTC類似薬」(*)を保険適用から外そうとしています。保険外しが見込まれる薬には、市販での価格が保険適用時の55倍に上るものもあり、全国の当事者から反対の声が上がっています。綾部市の3児の母親は「子どもの命、健康を脅かす問題。本当に悲しく、暗い気持ちになる」と見直しを訴えます。

 自民、公明、維新の3党は6月11日、医療費4兆円の削減で合意し、OTC類似薬の保険外しを医療削減の一環として盛り込みました。3党合意の直後に石破政権は、「骨太の方針」にも明記。また、国民民主党、参政党は参院選公約に掲げています。

自民が「参院選終わってからに」

 日本維新の会の前原誠司共同代表は7日、奈良市の街頭演説で「自民党からは『参院選が終わってからにしてくれ』と言われている」と暴露。参院選で、推進の政党が多数派となれば、一気に進行する危険性があります。日本共産党は「患者の負担が大幅に増加し、生死に関わる問題だ」と強く反対しています。

 患者家族や全国保険医団体連合会(保団連)、NPO法人日本アトピー協会は7月10日、厚生労働省で保険適用継続を求める厚労相あての署名計13万2473人分を提出し、「看過できない」と訴えました。

子どものことを考えると削りたくないが・・・

 小学生と中学生の3人の子育て中の綾部市の男性(35)=福祉施設勤務=は、子どもが気管が弱いため、たんの排出を容易にする、去たん薬「ムコダイン」を頻繁に処方してもらっていると言います。また、小学校高学年の次女は4歳から5歳にかけて、肌が日光に弱かったため「ヘパリン類似物質油性クリーム」を年間を通して使用していたといい、現在もクリームは常備しています。

 保険適用から除外されると、ムコダインで約40倍、ヘパリンは約21倍の薬代に。男性は、「これだけ値上がりすれば、本当に症状が重いとき以外は買うのを控えようかとなる。子どものことを考えると削りたくはないが、何万円もの負担となれば、その気持ちだけでは乗り越えられない。これだけ重大なことを、参院選が終わったらしれっと進めようとしていることが許せない」と憤ります。

 綾部市の公務員で、未就学児と小中学生の3人の母親(40代)は、3人とも肌の炎症が起きやすいため、「リンデロン‐V軟膏」と「ヘパリン類似物質油性クリーム」が欠かせないと言います。

 「虫に刺されたりするとリンデロンを塗り、冬場に肌が乾燥して固くなるので油性クリームを使っています。少し改善しましたが、真ん中の子は、特に肌が弱く炎症がすぐに他にも広がっていたので、必需品でした。医師が、子どもの状態もよく分かった上で、処方してくれるので、親としても安心です」

 保険外しで自己負担額は、へパリンで約21倍、リンデロンで40倍になると見込まれます。「かなりの負担増ですが、子どもの健康を考えると購入するしかありません。子どもの命と健康に直接関わる分野をなぜ削るのか、怒りを感じます」と語ります。

子ども医療費助成制度が台無しに

 綾部市では、医療費助成制度があり、中学生まで医療費は1カ月200円(1医療機関)です。「200円だから安心して病院にかかれたのに、これでは台無しです。こんなことを進めようとする政党には、参院選で絶対に投票しません」と語気を強めます。

 参院選では、日本維新の会と国民民主党が、医療費削減などにより現役世代の社会保険料の負担を軽減し、「手取りを増やす」と主張しています。「保険外しで負担を大幅に増やそうとしておきながら、よく言えるなと思います」とあきれます。

 前出の福祉施設に勤める男性は、「選挙の時には『手取りを増やす』と耳あたりの良いことを言うが、実際にはやろうとしていることは全く矛盾している。本当に私たちのことを考えてくれる政治に変わってほしい」と訴えます。

 日本共産党の塚崎泰史・綾部市議はこの間、つながりのある保育所や小中学校の保護者らにOTC類似薬保険外しの問題を知らせ、対話しています。「リンデロンなどは使用している家庭も多く、綾部では月200円で安心して医者にかかれていたのにと、保険外しに不安を訴える世帯は多いです。保険外しを許さないため、何としても倉林明子候補の3選と比例での躍進を勝ち取りたい」と力を込めます。

動画でOTC類似薬保険外しの問題を訴える塚崎市議