パネルディスカッションで意見交換する斉藤氏(正面右)、市交通局担当者、学生ら(1月15日、京都女子大学)

 交通機関での痴漢・盗撮をなくす啓発ポスター制作に取り組んでいる、京都女子大学の学生有志でつくる「性暴力撲滅プロジェクト」は1月15日、「私たちは性暴力の軽視をなぜ許す?」と題する公開シンポジウムを京都市東山区の同大学内で開きました。

 性暴力に対する認識を深め合い、性暴力のない社会、すべての人が安心して過ごせる社会環境をつくろうと初めて企画したもの。依存症治療に携わる西川口榎本クリニック(埼玉県)の斉藤章佳副院長が講演し、「加害者臨床」の経験から、痴漢・盗撮にしぼって実態や再発防止に必要な視点を紹介しました。

 斉藤氏は、加害者が満たしたいのは性的欲求よりも、自分より弱い者に対する支配欲や優越欲で、習癖性の高い行動だと指摘。加害者自身も幼い頃から同意なくスマホで動画撮影をされる体験、盗撮の犯罪性の軽視やネット情報から得る誤った性の認識など、社会の中で学習した認知のゆがみが性暴力の背景にあると強調しました。

 近年、盗撮の相談の増加、加害行為の低年齢化にふれ、「子どもの頃に学校や児童相談所が介入し、早期発見・治療につなげることが必要。加害を減らし、被害者を生む可能性も減らせる」と話し、性加害者への包括的性教育の取り組みから見える知見をまとめた近著も紹介しました。

 講演後は、斉藤氏と学生、京都市交通局高速鉄道部の担当者の4人が質問に答える形でパネルディスカッション。性暴力をなくすため、社会の認識を変えようと取り組んでいる啓発ポスター作りに関して、「駅構内に張り出され、学生でも社会に発信できることがあると実感できた」(今年度初参加の学生)、「学生との意見交換は学びが多い。それぞれの立場でできることを積み重ね、犯罪抑止に役立てたい」(交通局)などと発言しました。

 斉藤氏は、シンポ主催した京女学生らのポスター制作の取り組みについて、「性暴力を社会問題として捉えて、解決しようと世論に働きかけていることはすばらしい」と評価。性暴力の加害者は99・8%が男性であることから、男性が当事者性を自覚して取り組む動きをつくることを課題にあげました。

 閉会あいさつで、同大学ジェンダー教育研究所所長の手嶋昭子法学部教授は、「プロジェクトと協力し、学外の取り組みとも連携して性暴力をなくす大きな活動にしていけたら」と語りました。