好物のキュウリを分け合い、仲直りする、子どもたちに人気の場面

コロナ禍で劇団危機 団員結束し上演

 人形劇団京芸の「とどろヶ淵のメッケ」が今年度の児童福祉文化賞(舞台芸術部門)に輝きました。人形劇団京芸が同賞を受賞したのは今回が初めてです。同賞の候補となる児童福祉文化財には「ほっこりしあたー」も選ばれました。

 児童福祉文化賞は、国の審議会が推薦した児童福祉文化財の中から、各部門の最優秀作品と児童の健全育成に貢献した活動に対する特別部門の対象者を表彰するもので、1959年に厚生省がはじめ、現在はこども家庭庁、児童健全育成推進財団、児童育成協会の3者で主催しています。今年度の他の受賞作は映画『窓ぎわのトットちゃん』。過去にはさかなクン、映画『この世界の片隅に』などが選ばれています。

 「とどろヶ淵のメッケ」は、富安陽子さんの同名作(佼成出版社)を原作に、人形劇団京芸創立70周年企画として、2018年に製作されました。

 仲間から頼りにされないメッケが、仲間たちと協力して滝の水が枯れたなぞを解く冒険ドラマ。弱点を持った仲間たちが互いの多様性を認め合い、助け合いながら成長し、カッパ界の危機を救います。

 演出は、人形劇団京芸出身で売れっ子の北村直樹さん。カッパやサカナが水の中を縦横無尽に動かせるなど躍動感に満ちたものに仕上げています。500人の会場でも鑑賞できるスケールが大きい作品で、子どもも大人も楽しめます。

 コロナ禍により、予定していた全国の小学校公演がキャンセルになりましたが、全国の鑑賞団体が支援し、積極的に上演。アドバイスも多数受け、作品を洗練していきました。コロナ禍で劇団の運営も危機的状態となりました。クラウドファンディングに取り組むなかで、劇団の歴史や役割を再認識し、団員の結束とモチベーションを高めていったことが、作品の質を高める結果となりました。

 最近、鑑賞した人々から「メッケの姿はコロナ禍や震災に立ち向かう人々の姿と重なって見えた」などの感想が多く寄せられます。

 今回、小学校向けの作品制作に初挑戦した山本いずみさんは「弱点を持っていても成長し、いつか世の中の役に立てるチャンスが訪れるという原作のメッセージは、子どもたちに勇気を与えるのでは、と信じて作品にしました。そのことが評価されたのはうれしい。コロナ禍で劇団を支え、作品を育ててくれた人々に感謝したい」と語っています。