松井孝治氏が「商業集積のないまち」と不満をもらした、京都駅前から望む烏丸通

公約に「京都駅周辺再開発」「首都圏・海外企業誘致」明記

 京都市長選(2月4日投票)に立候補している、元通産官僚・元民主党参院議員の新人・松井孝治候補は、公約で「突き抜ける『世界都市京都』をつくる」をスローガンに掲げています。しかし、その内容は、首都圏・海外企業を呼び込む京都駅周辺の再開発で、旧来型の開発政策をより強力に進めようとするものです。

 松井氏の政策集では、「文化首都を支えるつよい経済の復活 京都を日本のシリコンバレーに」との柱を建て、「都市計画の見直しと連動した企業立地支援の強化」を明記。「京都駅周辺など戦略的なエリア開発を進めます。都市計画の見直しと連動した企業立地支援制度の充実、首都圏企業や海外企業の戦略的アプローチなどを強力に進め、安定した雇用、都市の持続的成長につなげます」としています。

 この「京都駅周辺など戦略的なエリア開発」とは何か──昨年12月27日に行われた政策集発表会見で松井氏は、「烏丸通。(京都)駅ビルから見ると(高層ビルがなく)きれいに(遠方が)見える。駅前にあんな商業集積がないまちってちょっと(政令指定都市ではない)」と不満をもらし、三菱地所による再開発が行われ、高層ビル群が立ち並ぶようになった東京・丸の内(東京駅前)を引き合いに出し、再開発推進を語りました(発言要旨は下記に掲載)。

中林浩氏

規制緩和で高層ビル「荒れたまちうむだけ」

 松井氏のこの再開発構想について、都市計画研究者の中林浩・神戸松蔭女子学院大学元教授は、「21世紀には通用しない旧来型の開発主義者であることに驚いた。高さや容積率などの規制を大幅に緩和し、外部資本の誘致で経済活性化を狙う手法は破たん済み。京都の優れた町のしくみを顧みない大規模開発を強行しようとしている。いくつかの高層ビルが建っても、空きビルや空地の多い、荒れた町をうみだすだけだ」と指摘します。

 中林氏は、松井氏が主張する「首都圏企業、海外企業」を誘致しても、もうけは市外・国外に流出し、大型開発に伴い地価高騰や住環境悪化を招くのではないかと懸念。「人口を維持し循環経済を活性化するなら中低層の町並みを作り出すことだ。これが世界の都市計画の教訓」と語ります。

 また、松井氏の政策には、最も人口減少が進み、課題の多い洛西ニュータウンや向島ニュータウンなど周辺地域についての言及もありません。

福山候補「すべての中小零細企業を支援する面的な産業政策に」

 数十年前、京都が東京や大阪と比べても繁栄していたのは、職住一体の商店や工房、事業所が多数を占め、中低層の町並みの中で商業集積が行われてきたから。福山和人候補は、松井氏の「京都をシリコンバレーに」の主張に対して、京都経済を担っているのは、雇用(83%)でも市税収入(94・8%)でも中小零細企業であるとし、「企業誘致や頑張る企業表彰型などの点的支援ではなく、全ての中小零細企業を幅広く支援する面的な産業政策が必要」と訴えています。

◼松井氏の会見での発言

 東京で仕事し、いろんなまちを見ました。政令指定都市の京都駅の駅前がズドンと空いてる。烏丸通。駅ビルから見るときれいに見えていいんですけど、駅前にあんな商業集積がないまちってちょっと(ない)。140万を超えてる京都市で。こんな商業集積ないまちでいいんだろうか。東京で言えば丸の内ですよ。皇居まで抜ける(地域では)、きれいさを保ったまま三菱地所が中心になって再開発して、いっぱい高いビルができて、商業施設もできて、すごいにぎわいが(ある)。昔は、夜になると誰も人通ってなかった丸の内(で)。東京みたいなまちが、変える努力をしてるわけです。それはもちろん民間が主導でやってるんですよ。そういうことを京都のまちで京都駅周辺だけでも(やっていきたい)。烏丸口の方で商業集積を作るっていうプロジェクトが進んでますが、東も南も東南も西南もいっぱい(やっていきたい)。実はキャパシティーもあるし、ポテンシャルがある。そこをどういう風に今後の都市計画もエリアを変えて集積を作っていくか。実は、京都市内の中心部にすごくポテンシャルがあるんです。伸びしろがあるんです。それをどう作るかっていうことを考えなかんと思います。

松井氏の政策集より