中京民主商工会が今年2月に創立70周年を記念して出版した『京都 中京民商 商人・職人 生活史』が好評です。初版の500部は京都市内の大型書店にも並んでほぼ完売し、8月末にさらに500部を増刷しました。

 同書は、会員から「聞き手」を募集し、応募した9人が、話を聞きたいと思う「語り手」をリストアップ。34人から商売の内容や継いだ動機、苦労や喜び、民商の魅力などを聞いてまとめたものです。登場する業種は、京焼・清水焼、京友禅、飲食店、理美容、喫茶店、スナック、古書店、占術師など多彩です。

 「コロナで休んでた時、お客さんを心配してたけど、お客さんも私を心配しててくれはって」(大衆酒場)、「民商は生涯の保険。何でも相談できる」(製菓店)、「こんなふうなやり方で、そこそこやっていけるんじゃないかなってのが、できてきましたね」(喫茶店)など、話を聞く側と語る人のフランクな京都弁のやりとりは、互いに顔見知りながら初めて聞く話も多く、引き込まれます。

 本の予算が当初の50万円から3倍に膨らんだことから、クラウドファンディングに挑戦。59人から51万1000円が集まりました。完成後は、ふたば書房や大垣書店、ホホホ座など7書店に並び、問い合わせも増えました。順調な売れ行きで増刷となり、再版のための予算として再度のクラウドファンディングに挑戦。102人から34万1300円が寄せられました。

 増刷を機に9月26日、聞き手と語り手が集うトークイベントが同民商事務所で行われました。

 参加者からは、手作り感を出したいと、会員に印鑑を彫ってもらい1冊ずつ表紙に押して腱鞘(けんしょう)炎になったことや、慣れない校正に苦労したこと、断片的な話ながら会員の生き様を感じた、などのエピソードが語られました。

 山元歩美事務局長は、本をつくるベースには、中商のホームページで会員を紹介したり、小冊子「商売を語る会」で聞き取ってまとめてきた背景があったと述べ、「いつも顔は見ているけど、こんな人生だったのか、そんなことを考えていたのかなど、断片だけど会員のライフストーリーに触れ、とても楽しかった。こんなこだわりある本、もっとつくってみたい」と話していました。

 B6版、343ページ。2000円+税。問い合わせTEL075・231・0101(中京民商)。