佛教大学の学生が、長崎で被爆した母子を取材し、核兵器も戦争もない社会の実現を願ってつくりあげた絵本『ようすけ君の夢』(クリエイツかもがわ)の再版を目指し、関係者がクラウドファンディングの協力を呼びかけています。

 絵本をつくったのは元佛教大学社会福祉学部黒岩晴子ゼミの学生ら。ゼミ生は、被爆60年の2005年に、佛教大学社会福祉学部が取り組んだ「原爆展」で、長崎の被爆者・●柳タケ子さん(79)=城陽市在住=の講演を聞き、その後、●柳さんと●柳さんの母・上村吉さんに取材して物語を考えました。

 絵本のさし絵は京都精華大学の卒業生が協力。世界の人々に読んでもらいたいと絵本には英訳、仏訳もついており、英訳者のなかには●柳さんの次女・●柳美紀さんもいます。08年に出版されました。

 題名の「ようすけ君」は生まれて間もなく亡くなった●柳さんの長男がモデルです。

 ウクライナ侵略を続けるロシアが核兵器の使用に言及するなか、「今こそ多くの人々に読んでもらいたい」と、再版に向けて取り組んでいます。

 再版予定は1000冊で、目標額は必要経費120万円です。締め切りは10月17日。

 ●柳さんは1歳6カ月のとき、爆心から1.8キロ離れた自宅で被爆。当日の夕方、防空壕(ごう)に避難しましたが、あまりに暑くて耐えられず、母子ともに放射能を帯びた黒い雨を浴び、体を冷やしたといいます。

 戦後、●柳さんは22歳で長男・洋輔君を出産。洋輔君は、心臓疾患のため、生後5カ月で亡くなりました。被爆者の子どもに心臓疾患が発生する確率が通常より高いとされ、産婦人科医もその可能性を指摘しました。●柳さんは、被爆者となった運命を悲観し、何度も自殺を考えたと言います。

 再版に向けて「私が、被爆していなければ洋輔は元気に生まれていたのではと今でも考えています。絵本の絵が洋輔に本当に似ていて、本の中に生き続けているようで心が救われます。被爆の犠牲は、何代にも及ぶことを、絵本を通じて考えてほしい」と語ります。

 黒岩晴子元教授は、「学生たちは長く生きることができなかった『ようすけ君』を生き返らせてあげたい、こんな子ども時代を過ごさせてあげたいと思い絵本を作りました。『ようすけ君の夢』は原爆や戦争がない世界です。英語訳や仏語訳もついており、世界の人々に『ようすけ君の夢』を発信したい」と言います。

 クラウドファンディングの支援は、1000円、3000円、5000円、10000円の4種類。1000円には、『ソーシャルワーカーは平和とともに』(黒岩晴子著)、3000円以上には、『ようすけ君の夢』が返礼品として送られます。

 支援金の送り先は次のとおり。

【郵便振替口座】

 口座名「平和ゼミ出版支援基金」

 口座番号00990―2―280187

【クラウドファンディングのURL】

https://camp-fire.jp/projects/view/689862?utm_campaign=cp_share_c_msg_projects_show

*●は「直」の下に「ハ」