『やまぶき』 Ⓒ2022 FILM UNION MANIWA SURVIVANCE

 フランス・カンヌ国際映画祭(5月17日~28日=現地時間)の監督週間や批評家週間と並ぶ並行部門の一つ「ACID部門」に、京都文教大学出身の山﨑樹一郎監督の最新作『やまぶき』が日本映画では初めて招待されました。

 ACID部門は、市場原理に抵抗する芸術的な作品を支援するために映画作家たちが1993 年に創設した「インディペンデント映画普及協会(ACID)」が作品選定・運営をするもので、毎年先鋭的な9作品を紹介し続けています。現地では公式選出、ACID部門を含む3つの並行部門を含めカンヌ国際映画祭と認識されています。

 「ACID部門」招待決定を受けて山﨑監督は「カンヌ映画祭は映画を知り始めた頃からの憧れです」とコメントしています。

 『やまぶき』は山﨑監督の劇場用長編映画第3作。真庭市を中心にロケし、初めて16㍉フィルムで撮影に挑戦。

 陽のあたりにくい場所にしか咲かない「山吹」をモチーフに現代日本社会と家族制度の構造の歪みに潜む悲劇と希望を描き出す群像劇。

 主役は韓国出身で、日本で演劇活動をし、映画初主演のカン・ユンスと映画、ドラマなどで活躍中の祷キララ。川瀬陽太、青木崇高らが脇を固めています。

 同作はフランスの映画製作・配給会社シュルビバンスとの共同製作。編集をフランソワ・トリュフォー監督の作品を手掛けてきたヤン・ドゥデが協力しています。

20年前の夢 2人で実現

 山﨑監督が映画の自主製作を始めたのは、大学生のときでした。京都国際学生映画祭(1997 年から開催)の企画運営にも参加。映画監督を夢見る海外の学生と交流するとともに、2000年には黒沢清、諏訪敦彦、青山真治(故人)各監督に作品を講評してもらいました。そのとき、ともに活動したのが当時、京都大学の学生で、今回の作品のプロデューサーを務める小山内照太郎氏。

 山﨑監督は、大学卒業後、岡山県真庭市に移住し、農業をしながら映画製作を続け、小山内氏はパリに移住し、映画プロデューサーとしてのキャリアを積み、今回2人はタッグを組みました。ヤン・ドゥデらの橋渡しをしたのは小山内氏。

 京都国際学生映画祭で、海外映画界の若き卵と親交を温め、日本の巨匠の叱咤で映画界の高みを見た2人。別々の道を歩んだ末、カンヌで20年前に見た夢を実現させました。

【追記】2022年5月6日午後4時10分に一部記述を訂正しました