直営化後の診療所の状況を報告する中村所長(11月13日、南丹市美山町)

職員体制不足で入院病床有効活用できず

 今年度から直営化された南丹市美山町の「国保南丹みやま診療所」(旧美山診療所)をめぐり、医療水準の維持を求めてきた住民団体「美山の医療を守る会」は11月13日、同町内で診療所の現状などについて考える住民集会を開催し、地元住民ら50人が参加しました。集会では廃止された老健施設や無料送迎の復活など医療・介護体制の充実を求めていくことを確認しました。

 主催者を代表し、同会代表世話人の登尾まゆみさんが、「直営化で困ったことがたくさんあると思う。皆で問題を共有し、要求につなげたい」とあいさつしました。

 直営化をめぐり、同市は当初、「平日のみの外来診療とする」として入院病床の廃止を打ち出していました。同会や住民の要求によって直営化後も入院病床(4床)が維持されています。

 病床をめぐり、旧診療所から引き続き所長を務める中村真人医師は、高齢者が入院した場合、転倒の危険などがあるため目を離せないが、当直の看護師が1人体制であるため、最大でも2床までしか受け入れられていない現状を訴えました。そして、病床のように職員体制の不足で病院の機能が有効に活用されず収入減少につながっており、直営化後の数カ月で直営化前と比べ大幅に赤字になっていると語りました。

 また、以前に老健施設を利用していた住民の一部が、現在は同町の特別養護老人ホームを利用していることを紹介し、他町も含めて「利用者が他に押し出されている」と強調しました。

 直営化後も夜間、休日、救急に対応できる体制がとられているものの、住民にあまり認識されていないという情報発信の課題を指摘し、「市の方からもっと発信いただきたい」と述べました。

 同診療所職員組合の早川奈保美さんは、廃止された無料送迎をめぐり、「広大な地域で、すぐに診てもらえる環境づくりが最大の課題」と指摘しました。また、レントゲン技師の退職に伴う新たな人材確保が喫緊の課題となっていることや、患者の相談業務が看護師に集中していることなどマンパワー不足にともなう課題を報告しました。

 京都医労連の坂田政春さんは、同職員組合が6月に実施した住民アンケートの結果(別掲)について報告し、「(直営化前まで)果たしてきた役割を残してほしいというのが住民の大きな願いだ」と指摘しました。

 会場からは、「住民運動で入院病床を守れてうれしいが、(今後)赤字を理由に縮小に向かわないか」という不安の声が上がりました。 他にも高齢になっても安心して生活できるよう老健施設の復活を求める声などが寄せられました。

 最後に同会事務局から▽老健施設、無料送迎、無料低額診療の復活▽ニュース発行などの情報発信▽患者の相談員確保─などを市に対して要望するなどの運動を進めていくことが提起されました。

「無料送迎」「老健」復活を■職組が住民アンケート

 美山診療所(現、国保南丹みやま診療所)の直営化をめぐり、美山診療所職員労働組合は住民アンケートを実施し、町内の約1割の世帯から回答が寄せられました。回答では医療・介護体制への不安から体制の充実を望む願いが浮き彫りとなっています。

 アンケートは直営化(4月1日)後の6月に実施。町内全1738世帯に配布し、166世帯(9・6%)から回答を得ました。

 「主に受診している医療機関」(複数回答)では、同診療所が最多で全体の約36%を占め、「明治国際医療大学付属病院(同市日吉町)」の約18%、「京都中部総合医療センター(同市八木町)」の約15%が続きました。

 「直営化後の体制変更に伴う意見」では、「送迎・足の確保」が最多の約18%で、「以前の体制」「充実を・縮小困る」(各11%)など無料送迎や老健施設など直営化に伴い廃止された体制を求める声が多くみられました。他に「不安・不満・不自由」が約11%などとなっていました。

 「今後、診療所に期待すること」では、「今までの体制」が最多の約24%、次に「医療体制の充実」が17%でした。4番目に多かったのは「送迎・交通手段」の約10%でした。そして3番目に、現状対応する体制を取っていますが「休日・時間外・24時間」(12%)が入っており、市による情報発信が不十分であることも浮き彫りとなりました。

 自由記述欄では、「車にのれないようになると困る」「老健施設の廃止が大変困る」「医療や福祉の縮小が進められ、住民の減少につながることに不安」など直営化に伴う体制縮小への不安が出され、「一番不安に思うのは医療体制であり、老後は大阪に帰るつもり」という意見も寄せられました。