計画見直しを求める意見が次々と出された、北山エリア整備基本計画についての住民説明会(11月8日、京都学・歴彩館)

 京都府は10月8、9の両日、京都市内で京都市左京区の府立植物園の開発や、府立大学内に1万人規模のアリーナ建設計画などを盛り込んだ「北山エリア整備基本計画」などについて初の住民説明会を行いました。参加した住民からは「植物園の開発は中止を」「府立大に1万人のアリーナは要らない」「計画を白紙撤回すべき」などの意見が相次ぎ、府側は明確な回答を避けながらも計画推進姿勢を示しました。

 8日の京都学・歴彩館(左京区)での説明会は400人、9日のホテルルビノ京都堀川(上京区)は100人と両会場とも満席となりました。参加者からは府への怒りの声が相次ぎ、白紙撤回を求める住民の声には大きな拍手が起こりました。

 8日の説明会で、府大学改革等推進本部の中地則元事務局長があいさつし、「これまで説明会の開催ができず、お待ちになられた方が多数おられた。遅くなりまして申し訳ありません。知事へのご意見も600件以上にのぼっている。ご意見をいただき、議論に組み入れたい」と述べました。

 府側は、昨年発表された同整備計画や、「京都府立植物園100周年構想(2019年2月策定)、設置が予定されている「植物園整備検討に係る有識者懇話会(仮称)」などについて説明。北山エリア内に宿泊施設やにぎわい施設の建設、植物園での人の流れを引き込む動線整備、府立大学に1万人規模のアリーナを建設する計画を説明しました。

 植物園の開発計画について質問が集中。府の計画図面では、「人の流れを植物園へ誘う」などとし、植物園の四方から内外を結ぶ矢印が多数描かれていることに、参加者から「植物園への出入りを自由にしてしまうのか?」「植物園に鹿や野良猫などの獣害の恐れが高まる」「静かな空間を残してほしい」と批判の声が上がりました。

 府側は、「公園にして植物園の垣根をとるという考えは持っていない」としながらも、「極力、垣根をなくすという理念的なものを示した」などと説明。市民からは「意味がわからない」「それならば計画は白紙撤回すべき」と意見が出されました。

 また、参加した大学の研究者らから、「植物園をしっかりと残せば文化遺産になる。もっと勉強し直してほしい」「なぜ広大な緑地を削るような計画を作るのか、理解できない」などの意見が出されました。

1万人アリーナで大学内出入り自由「防犯、学生の安全どうなる」

 また、府立大学のアリーナ計画についても質問や意見が噴出。府立大の女子学生は、「歴彩館で研究しているが、(ガラス張りの構造のため)『ビニールハウス』と呼ばれているほど暑い。図書館に行く動線も悪く、不便だ。府の計画には不信感を抱いている。大学の設備がなぜ北山エリア(開発)に使われないといけないのか」と述べました。府立大に子どもを通学させている女性は、「1万人規模のアリーナができて、トイレや大学の施設に自由に出入りできてしまう。防犯の問題もあり、学生が安心して学べるのか」と述べました。

 説明会のあり方に対しても「子どもの意見を反映させてほしい」「今後も説明会や意見を反映する仕組みをつくってほしい」などの意見が出されました。

 府側は、再度の説明会などを検討する姿勢を見せましたが、時期などは明示しませんでした。

画面中央の白い屋根の建物がアリーナへの建て替えが計画されている府立大学の体育館。左側が府立植物園。撮影:松本博