右京区京北の自宅の写真を前に「北陸新幹線延伸計画について考えてほしい」と話す外山さん

 北陸新幹線京都延伸問題を多くの人に知ってほしい―京都市右京区京北在住のカメラマンがルートの近くとなる自宅周辺の風景を、ガラスに焼き付ける「湿板写真」で撮った7枚とともに、京都を南北に縦断する計画に危機感を持ち、思いを綴った長い文章を添えています。10月17日まで、京都国際写真祭(公募)の三条両替町ビルで展示中です。

湿板写真と銀継ぎ技法

 外山(とやま)亮介さん(40)。2019年春、東京から京北へ家族で引っ越してきました。伊根町へ旅行した際、途中の京北町の古民家に宿泊。茅葺(かやぶき)屋根の風景と暮らしに感激し、移住を決意しました。

 同計画を知ったのは同年秋。今春、自宅周辺がトンネル工事の現場になるかもしれないと近所の住民から聞きました。知人からは残土や水枯れ、汚泥にはヒ素が含まれる可能性があること、23年度にも工事開始予定であることなどを聞きました。ルートと言われる現地を歩く企画にも参加。計画内容を知れば知るほど、当事者として黙っていられなくなりました。「このコロナ禍の時代、2兆円以上もの税金を使って、京都の真下にトンネル掘る新幹線って必要ですか? 自然は一度壊したら元には戻らないですよ。でもどうしたらいいのか…」

 湿板写真にしたのは、京北の暮らしで古材や古着など直して使い続ける文化、工芸写真の仕事で知った、割れた茶碗などを直す金継ぎという技法を生かしたいと考えたからです。写真を焼き付けたガラスの原版を割り、銀継ぎで直し、作品に仕上げました。

銀継ぎが施された京都市内市街地の写真

 写真は、茅葺の自宅、山に向かう小径や渓流、稲、川下の嵐山…。「大事な食器を継いだり、衣服を繕ったり、畑や田んぼも毎年実るように、今の暮らしを大事に続けていくことが僕にとっては大切なんです。新幹線工事が壊したものは戻らない。多くの人がそのことを知って、考えてほしい」

 キャプションに添えた文字数は合計5520字。展示を断るギャラリーもありました。公募が決まり、銀継ぎや英訳を手伝ってくれた友人、カンパを寄せたスーパーのオーナーらの尽力で展示にこぎつけました。外山さんは、訪れた人たちに問題点や計画図などを書いたチラシを手渡し、写真に込めた思いを語っています。

 京都国際写真祭は10月17日まで(10時から19時)、京都市内15カ所で開催中。外山さんの展示会場は京都市中京区三条通両替町角の三条両替町ビル2階。無料。問い合わせメールinfo@kyotographie.jp(事務局・総合受付)。