『夜明け前のうた』 Ⓒ2020 原 義和

 沖縄では日本に復帰する1972年まで、法により精神障害者が小屋などで監禁されました。22日まで、京都シネマ(下京区)で上映中のドキュメンタリー映画『夜明け前のうたー消された沖縄の障害者』は、家畜以下の生活を余儀なくされ、闇の中で消えていった人々の存在を明るみにしています。

 日本では、精神障害者を小屋などに隔離する私宅監置を法的に認める「精神病者監護法」が、治安維持などを目的に1900年設立。50年の「精神衛生法」施行にともなって禁止されました。ところが、沖縄は52年の発効のサンフランシスコ講和条約によって日本から切り離されて米軍統治が続き、私宅監置は違法でなくなり維持されました。60年には、琉球民政府の「琉球精神衛生法」により合法化されてしまいました。72年に違法となったものの、地域の人々の記憶から薄れていきました。

 2005年に沖縄に移住した原義和監督は、精神病についての取材の中で11年、私宅監置された人々を多数撮影した写真があることを知り、彼らの足跡を訪ねてテレビドキュメンタリー番組を制作。「存在を消してはいけない」と18年から、公益社団法人沖縄県精神保健福祉会連合会と協力して写真展を全国で開き、『消された精神障害者』(高文研)も出版してきました。

 映画は、私宅監置、その後を生きた人々の周辺の「歌のうまい人だった」「優しい人だった」などの証言から被害者の人間性を浮かび上がらせるものになっています。

 原義和監督は「公的に認められたため、牢屋のような小屋で精神障害者が私的監置され、多くが死ぬことでしか外に出られなかった。地域からもいないことにされていた。これらの歴史が明らかにされ、公の責任として謝罪されなければならない。どんな命でも等しく尊いはず。彼らが生きて輝いていたことを映画で知らせたかった」と語ります。

 ~22日(木)16時15分、京都シネマ(下京区四条烏丸下る水銀屋町260COCON烏丸3F)☏075・353・4723。1800円、60歳以上1200円、大学生以下・障がい者1000円。