新道通の右側が学校跡地で、ほとんどがホテルに

住民が怒りの声「金もうけしか頭にないのか」

 京都市が、ホテル誘致計画を進める東山区の新道小学校跡地活用をめぐり、市は昨年12月、事業主体・NTT都市開発の事業提案の概要や各施設の面積などを地元に公表。グラウンドは消えて学校跡地はほぼホテルとなるなど、地域のための施設はほんのわずかとなることが判明しました。しかも、市がこれまでに行った地元説明会は、町内会長らを対象に開いた1回だけ。住民からはホテル有りきの計画に怒りの声が上がります。

 「そこのけそこのけ、ホテルが通るやな」──。町内会長の一人、辻雅典さん(67)はこう訴えます。地元の新道小跡地にホテルが誘致されることを知ったのは、市がNTT都市開発(東京都)を契約候補事業者に選定(昨年10月30日)後の新聞報道でした。地元説明会が開かれたのは、選定から1カ月以上たった12月8日。市が同社と基本協定書を締結した日でした。説明の対象は学区の25町の町内会長などに限定し、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に「質疑応答はなし」でした。

 辻さんはその日、都合で欠席。市の形だけの説明会のやり方にあきれながら、届けられた資料を見て驚きました。同社の事業提案では、学校のグランウドは無くなっていました。

事業者選定時には全体像示さず

 市は、事業者選定をした際には、簡単な概要とイメージ図を発表しただけでした。同社との基本協定書締結後に初めて、市のホームページに同社の事業提案の概要や全体図を公表。地元説明会には、ホームページでの公表資料より詳しい、各施設ごとの平面図や面積も提示し、ようやく全体像が判明しました。

 地元説明会資料によると、地域のために残る施設は、面積約4000平方㍍の学校跡地で、消防分団詰め所と新たに設置される地域交流スペース(合計建築面積約120平方㍍)だけ。跡地と一体で再開発する宮川町歌舞練場敷地に新設される地域施設棟(3階建て)を合わせても、3施設、同面積の合計は約490平方㍍に過ぎません。

夏祭りや運動会、餅つき大会、文化教室など地域の活動に使われている元新道小学校の校舎と校庭

 現在、校舎では、学区民交流のための文化教室「ふれあいサロン」などが開催。とりわけグラウンドでは、地元の夏祭りや運動会、餅つき大会をはじめ地域の防災・消防分団の訓練、ソフトボールの練習なども行われ、地域コミュニティーの核となってきた場所です。ところが、同「サロン」やグラウンドを使った催しはどうするのか。地元説明会資料に説明はありません。

 住民置き去りに、ほぼホテルとなる計画が進められることに、辻さんは憤ります。「『サロン』やグラウンドでの集まりは、社会教育の一環でもあるのに、市からは単なる遊びと思われているのと違うか。市の頭にあるのは、地域のことやない。金もうけだけやないか」

 市は「説明会の時期や対象も、自治連合会の役員らの意見を聞いて行った。事業提案も地元の要望を踏まえて選定した」(資産活用推進室)などと説明しています。

「週刊京都民報」1月10日付より