建設アスベスト訴訟の初の最高裁判決(神奈川1陣)が年内にも予想されるなど同訴訟が山場を迎えるなか、「アスベスト被害の根絶をめざす京都の会」は9月26日、今年の通常国会で改定された大気汚染防止法(大防法)と石綿健康障害予防原則(石綿則)についての学習会を開催。講師を務めた、大阪アスベスト対策センター幹事の伊藤泰司氏は「裁判で国と企業の責任を明確にするとともに、国の政策を転換させ、大きく立ち遅れている石綿対策を前に進めることが必要」と訴えました。

 伊藤氏は、「日本社会の大問題としてのアスベスト問題」と題して報告。日本の石綿飛散防止策について、責任者の配置や点検義務など平常時の管理規定や除去作業についての資格制度がなく、除去工事の技術も低レベルに留まっていることなどを課題としてあげ、「ILO条約で求められているにもかかわらず、こうした課題は大防法や石綿則の改定では手が打たれなかった」と指摘しました。

 2010年ごろから、急速に対策を強めている韓国の動きを紹介。昨年の法改正では全保育園の石綿調査・管理が義務化されたほか、学校での被害を防ぐために保護者らが「監視団」を作り、管理強化を進めていることをあげ、「日本の使用量は韓国の5倍もあり、学校では『吹き付け』が多用されている。こうした実態にもかかわらず、制度や規制強化が欧米や韓国から数段立ち遅れているのが実態」と述べました。

 最後に、大阪府内でのアンケートから若い世代ほど石綿被害を「過去の問題」と捉える傾向があると述べ、「自分の住む戸建てには石綿建材が使われていないという思い込みもある。地域でのウオッチング活動など、こうした世代に周知していく必要性を感じている」と語りました。

 石原一彦会長(立命館大学教授)が開会あいさつし、「裁判勝利とともに、もう二度とアスベスト被害を生まないことがこの会の目標。世論にも働きかけ、被害根絶への道筋を示したい」と述べました。

 副会長の福山和人弁護士(京都訴訟弁護団事務局長)は、神奈川1陣訴訟の最高裁弁論が10月22日に行われることに触れ、高裁判決で認定されなかった「一人親方」への賠償責任を「見直す」としていることは大きな前進と評価した上で、京都・大阪の関西関係の訴訟で勝ち取った石綿建材の製造禁止や集塵機付き電動工具の義務付けなど重層的な対策については、申し立てから落とされたとして注意が必要と指摘しました。裁判勝利に向けて、「原告や弁護団など当事者だけでは勝ち抜けません。アスベスト被害を我が事として取り組む人が広がれば判決の水準も変わります。京都の会の活動の意義もそこにあります。引き続き、世論を喚起する取り組みを続けていきましょう」と呼びかけました。

 「京都の会」は同日、第7回定期総会を開催し、2020年度の活動方針、役員体制などを承認しました。