府立大キャンパスから植物園の敷地に一部食い込む形で示されたアリーナの立地図
アリーナ構想をまとめた報告書

「稼ぐ」が主眼、外資系コンサルが府委託受け提案

 府が京都府立大学(京都市左京区)の敷地内に、プロスポーツ公式戦やコンサートなどが開催可能な最大1万人規模のアリーナを建設する計画を進めています。府立大と府立医科大、工芸繊維大の3大学合同体育館として設置しながら、民間企業が興行利用できる施設となる計画で、学生や教職員から疑問の声が上がっています。日本共産党の光永敦彦府議は代表質問(18日)でこの問題を取り上げ、同アリーナ含む「北山エリア」全体の開発構想を告発し、計画を見直すよう迫りました。

プロ公式戦やコンサートも

 同アリーナ計画は、国際的なコンサルティング企業である「KPMG」(本部・オランダ)の会員会社「KPMGコンサルティング」(本社・東京都)が府の委託を受け、3月に報告書(「北山エリアにおけるアリーナ的要素を持った体育施設の整備可能性調査業務最終報告資料」)をまとめたもの。

 府立大学、府立医科大学、京都工芸繊維大学の3大学とともに、京都のプロバスケットボールチーム「京都ハンナリーズ」の運営会社「スポーツコミュニケーションKYOTO」が利用することとし、収容人数は5000人から1万人を想定。整備費用は140~155億円を見込み、「2024年度竣工」としています。

 大学が授業や部活動、サークル活動にメーン施設を利用できるのは休日約45日、平日155日と年間で約3分の2に制限され、興行利用としてスポーツイベント(22日)、音楽コンサート(30日)を想定しています。

 同報告書で示された立地図では、府立植物園の南端部分の敷地にも食い込み、現行の府立大体育館や大学会館、クラブボックスなどの一帯が示されています。

現行体育館は授業で使えず

 そもそも同計画は、スポーツ庁が2025年までにスポーツ市場規模(15年現在で5・5兆円)を15兆円に拡大することなどを目指し、民間活力導入などで「稼ぐ」ことを強調した「スタジアム・アリーナ改革」に府が手を挙げたことが発端。

耐震基準を満たしていないため、現在は授業で使用できなくなっている府立大の体育館

 こうした「稼ぐ」ことを主眼とした計画をすすめる一方で、現行の体育館含め大学施設全体が老朽化し、耐震化が遅れていることが問題になっています。同大内施設の耐震化率は51・7%と、国立大学法人での平均(98・7%)よりも大幅に遅れています。現在、体育館は授業では使用できず、体育会系の部活動などに限って、承認されれば利用できるという状況です。

 同大准教授で、京都府公立大学法人労働組合の長谷川豊執行委員長は、教職員や学生に丁寧な説明などがないまま計画が進んでいるとし、「府は詳細な説明を行うべきです。高額・多機能のアリーナ構想よりも、安全・安心のために大学の教育施設としての体育館や老朽化した学舎を早急に建て替えてほしい」と話します。

 また、大学院生の男性(23)も、「学生には何の説明もありません。体育会系クラブやサークル活動、授業で使えるよう、きちんと大学の施設として整備してほしい」と話します。

「北山エリア開発」利益最優先の計画見直しを

 光永議員は、同アリーナ計画とともに、旧府立資料館跡地を利活用したシアターコンプレックス構想、収益のためのホテルなどの建設案など、「北山エリア」を利益最優先の地域に変えようとしていると告発し、「大学内でまともな議論も検討もないまま、計画がどんどん進むのはおかしい。アリーナ建設を優先させ、老朽校舎の建て替えは先送りするのか」と西脇隆俊知事に迫りました。

 知事は、学内の計画でもアリーナ施設構想が入っているなどと強弁し、建設推進の姿勢を示しました。