事件が起きた障害者施設を訪れ、元職員のことなどについて聞く弁護士(右)
相模原殺傷事件を問い直す

 難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の依頼で、医師が安易に嘱託殺人を実行する事件が京都で起こり、病や障害を持つ人が生きづらい不寛容な社会のあり方や、命に優劣をつけ安楽死を容認する思想が問われているなか、「意思疎通が出来ない人は安楽死させるべき」と主張する障害者施設元職員が入所者19人を殺害した相模原殺傷事件(2016 年)と正面から向き合ったPカンパニーの『拝啓、衆議院議長様』が京都労演9月例会(13・14日、呉竹文化センター)で上演されます。

 作品は、「シリーズ罪と罰」と銘打ち、死刑制度やNHKの従軍「慰安婦」番組改ざん事件などを題材にした作品を制作・上演してきたPカンパニーが、相模原殺傷事件を「現代の日本、世界が抱える問題の縮図」ととらえ、社会性の高い作品を次々と送りだす劇作家・古川健に脚本を依頼し、昨年2月、東京で初演しました。

 作品のタイトルは、元職員が犯行5カ月前の2016 年2月、衆議院議長宛てに「犯行予告」を提出したことをもとに付けられています。

 作品では、現実の相模原殺傷事件同様に、障害者福祉施設入所者を殺害した容疑者の弁護を担当する、死刑廃止が持論の人権派弁護士を主人公に設定し、弁護士が被害者家族や被告の主張を聞くなかで、「被告は死刑になっても当然の人間だ」と思うようになり、降板するか揺れるものの、先輩弁護士の激励や施設職員の思いを聞き、個人の資質に原因があると捉えれば問題解決にならないと、再び弁護を決意する姿を描いています。

 実際に元職員が、衆院議長に宛てた「犯行予告」で重複障害を持つ人々が「安楽死できる社会」の実現が目的であるとし、安倍首相と相談してほしいと求めたことをめぐって、こうした主張が生まれる背景などを考えさせられるものになっています。弁護士の「生きる価値のない人間など存在しない」などの台詞は多くの示唆に富んでいます。

 なお、相模原殺傷事件の裁判は2017 年9月、横浜地裁で始まり、今年3月、死刑判決が言い渡されました。元職員自ら控訴を取り下げたことで刑が確定しています。

 13日(日)午後3時、14日(月)午後1時半、6時半。入会金1000円、一般月会費3500円、学生1500円、高中生1000円。通常、会費は1カ月分前納のところ、9月例会は1カ月分の前納なしで鑑賞可。問い合わせ☏075・231・3730(京都労演)。