前泊博盛・沖縄国際大学教授

 沖縄県、京都府含め全国の在日米軍基地で感染が広がり、米国由来の強毒性の新型コロナウイルスが日本各地に広がる危険性が急速に高まっています。

 米国は世界最多の感染者数(500万人)と死者数(17万人)を数える新型コロナ感染大国です。その米国から米軍人・軍属・家族らを十分な感染対策も管理もなしに日本国内に自由に出入りさせてきたのが日本政府です。

 日米地位協定9条で、米軍は日本の出入国管理、関税、検疫などの国内法の適用を免除されて国内外の米軍基地間移動の自由を許されています。その危険性が、世界的な新型コロナ感染拡大の中で浮き彫りになりました。

 米軍基地はフェンス一枚隔てていますが、米軍人らはフェンスを越えて自由に日本国内に入ってきます。そんな状態で感染対策なしの入国を許すのは感染拡大の危険性を認識しながら自由な移動を許す「未必の故意」の罪であり、入国前にPCR検査を義務付けるなどの歯止めをかけないのは「不作為の罪」といえます。このような政府の対応は国民の命を危険に曝(さら)す犯罪的な行為と言えます。

 毎年7月、8月は米軍の異動時期で、沖縄県だけでも5000~7000人が異動します。沖縄では米国から異動してきたばかりの米兵らが7月4日の米独立記念日前後に大規模な祝賀パーティーを基地外で開き感染を広げたとの報道もあり、大騒ぎになりました。

 沖縄県は米軍司令官に米軍関係者のコロナ感染情報の開示を求めましたが、当初は国防総省の指令で不開示を通知し県民から猛反発を受けました。「基地のロックダウンを」との厳しい声に、渋々感染情報の開示に応じました。

韓国は入国前の検査義務化

 韓国では入国前のPCR検査の義務化や感染情報の通知を米軍に求め、応じさせています。不作為の日本政府とは大違いでした。沖縄県の強い要請を受けて、その後、日本政府も入国前のPCR検査や入国後の2週間の隔離期間の徹底を米軍に求め、7月中旬以降は米軍も応じるようになっています。米軍は要求すれば応じますが、要求しなければ対応しません。

 京都の米軍基地での感染拡大の動きをみても、米軍に対する日本政府の忖度(そんたく)、追従姿勢が国民の命を危険に曝しているといえます。

 沖縄に駐留する米海兵隊は「新型コロナ禍でも即応力を示すため」として2週間の訓練実施を発表するなど、感染拡大につながりかねない訓練を繰り返しています。

 駐留米軍への国内法適用や基地内への自国軍司令官の常駐派遣など米軍の管理、監視態勢を強化してきたドイツやイタリアなどに比べても、日本の米軍対応の甘さは異常で非常識です。米軍への出入国管理法など国内法適用も含め、地位協定改定に向け日本政府は、強い姿勢で米軍に要求していくべきです。