カメジロー
(右から)瀬長亀次郎、孫の内村愛さん、妻のフミさん(左端) ©TBSテレビ

 現在の「オール沖縄」につながる沖縄県民の自治の思想を育んだ瀬長亀次郎・沖縄人民党委員長(日本復帰後、日本共産党副委員長)の歩みや、施政権奪還・日本復帰へのたたかいを描いた佐古忠彦監督のドキュメンタリー映画第2作『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』が9月7日、京都みなみ会館(南区)で公開されました。初日舞台あいさつに訪れた瀬長亀次郎の次女・内村千尋さんにインタビューしました。

映画館前に整理券の列

 ―映画上映の反応は

 沖縄・那覇市の桜坂劇場で先行上映しました。前回あまりにも多くの人が映画館前に並んだので、今回は来館者に整理券を配布する方式に変えましたが、整理券をもらうために1時間以上前から列が出来る状況でした。

 那覇市から1時間かかるうるま市からバス2台に乗って50人が1時間前の午前8時に訪れました。午後3時の回まで見られなかった方が、瀬長亀次郎の残した資料や民衆資料を展示する不屈館に見学に来られました。

 今まで不屈館の来館者は県外が7割、県内が3割でしたが、映画を見て不屈館に来館される県民の方が多くなり、喜んでいます。

 前作は亀次郎を知っている世代が圧倒的でしたが、今回は、「カメジローという名前は親から聞いていたけどどんな人なんだろうって映画を見て、こんなすごい人だったと初めて知った」という若者が増えています。

 〝なぜ、沖縄の人々が基地に反対するのか、県外の人々が理解できないのは、沖縄の戦後史を知らないからだ〟と、佐古監督は映画製作の動機を語っていますが、実は、沖縄でも平和教育は沖縄戦で終わっていて、戦後史は教えていない。沖縄の若い人にも見てもらいたいという思いもありました。特に若い研究者が興味を持ってくれたのはありがたいことです。

(右から)挨拶する内村千尋さんと佐古忠彦監督。司会の吉田由利香館長

 ―映画の製作や上映を通じて新たな発見はありましたか

沖縄の民意伝える迫力

 佐藤栄作首相(当時)との国会論戦全体を初めて見ました。あんな迫力でやっていたのかとびっくりしました。あれくらいの勢いで沖縄の問題を訴えないと、沖縄の民意は政権に通じないのだと改めて思いました。

 また、私たち家族にとって父が闘っていることは日常の風景だったんですが、第三者の目で客観的に作られた映画を見て、父は異常な状況の中で闘っていたことが改めてわかりました。弾圧されても弾圧されても立ち上がっていく。私たちも異常事態の中で暮らしていたんだと実感しました。

 ―映画が作られるきっかけは

 佐古さんが個人的に不屈館に見に来られ、「こんなに資料があるなら、番組が作れそうだ」と話されたのが最初です。実際に、番組を製作され、これが評判となり、映画になりました。

 不屈館は、亀次郎生誕100年の2007年、那覇市国際通りの那覇市ぶんかテンブス館で1週間、写真や資料の展示をやったことがきっかけで誕生しました。展示後、「こんなに資料があるんだったら常設の資料館を作って欲しい」との意見が多く出され、私としても資料を埋もれさせるのはもったいないと思い2013年、常設館として設立することにしました。生誕100年記念の展示がなければ、今回の映画もなかったかもしれません。

 ―映画が新基地建設反対などで闘っている人々をも励ましていますね

 辺野古新基地反対で座り込みをしている人も映画を見て「またがんばらんといけないという気持ちになった」と言い、不屈館も訪れています。

 自分のためでなく、民衆のために弾圧されても、闘い続ける、その生き様に感動したという人が多いです。父は闘いの中から「弾圧は抵抗を呼ぶ」「抵抗は友を呼ぶ」などの言葉を残していますが、そのような言葉、精神が今の闘いに引き継がれています。

 父が切望したように、沖縄から一刻も早く基地をなくしたい。そして父の墓前に伝えたい。

 不屈館 火曜休館。午前10時~午後5時。入場料500円。大高生300円。中学生・障がい者無料。65歳以上400円。那覇市若狭2丁目21―5。問い合わせ☎098・943・8374。

 京都みなみ会館上映時間など ~19日(木)午前11時、20日(金)~26日(木)午後4時10分。1800円、60歳以上1100円、学生・障がい者1000円。同館☎075・661・3993。