大岩山
斜面の一部で崩落が起きている大岩山を調査する西野佐知子京都市議(7月28日、伏見区)

 京都市伏見区小栗栖の大岩山で、違法造成された山頂などの土砂が昨年7月の西日本豪雨で崩れ、住宅地に迫った問題で、問題発生から約1年1カ月がたつものの、市が土地管理会社に今年7月26日を期限に命令した是正工事は、着手もされていないことが分かりました。市は、土地管理者に是正工事を促しながら、代執行に向けた手続きに入ると言いますが、期限が来れば必ず代執行する訳ではないと説明。住民らは「いつになったら、住民の安全は戻ってくるのか」と怒りの声を上げます。

 市は今年2月26日、土地を管理する「マハリシ・グローバル・トレーディング・ワールド・ピース」(栃木県)に対して、「災害防止措置命令」を発令しました。その内容は、宅地造成等規制法の基準に合致し、市が恒久的安全対策とした▽土砂の一部撤去による斜面の安定化▽雨水処理のための調整池の設置▽斜面保護のための緑化―に沿った是正計画書の提出と是正工事の完了。その履行期限を7月26日としていました。

 ところが、同社からは、市の対策に沿った是正計画案が提出されたものの、期限内の工事完了どころか、正式な是正計画書さえ提出されませんでした。

 同社が計画書提出と是正工事を先延ばしたのは今回が初めてではありません。市は「代執行も視野に入れる」(今年2月7日、市議会まちづくり委員会)と言いながら、ずるずると同社の違法を容認。今回も、市のその姿勢は全く変わってはいませんでした。履行期限が過ぎた29日、取材に対して市は、命令の履行はされなかったと説明。その上で、「自主是正を促し、並行して、代執行に向けた『戒告』の手続きを速やかに取る」としたものの、戒告から代執行までの履行期限を「5カ月」間という長期に設定。しかも、期間内に工事が履行されなくても、「必ず代執行する訳ではない。その時点で判断する」と述べました。

 土砂崩れが起こってから、土地管理者が行った対策(昨年11月完了)は、市が昨年9月に発令した命令に基づく、▽斜面補強のための延長18㍍、高さ1・5㍍のふとんかご(鉄線で編んだかごに割栗石を詰めたもの)の設置▽南側斜面の緑化―の2つだけです。

 現在、山頂付近の一部斜面で、崩落も起こっています(写真)。昨年の豪雨の際、自宅の目前まで土砂が迫った地元の小栗栖自治会会長の西村嗣子さんは「市は『代執行』を口にするけど、やる気があるんですか」と怒りをあらわにします。地元住民で、現場の監視を続けている飯田浩靖さんも、「この間の大雨で、斜面崩壊が進んでいます。もう待てません。私たちの要求は原状回復です。すぐにも代執行を」と訴えます。

共産党「早急な是正工事を」 土砂条例制定も要求

 この問題では、日本共産党は、いち早く現地調査をし、土砂崩れが起こる前から対策を要求してきました。この間の議会では、一刻も早い是正工事と業者が応じない場合の代執行を求めてきました。

 7月25日のまちづくり委員会で、赤阪仁議員が「この間、連日大雨注意報が出ている」と述べ、是正工事を急ぐよう要求。26日の産業交通水道委員会では、山根智史議員が「住民の安全が最優先になっていない」と市の対応を厳しく批判しました。28日には、西野佐知子議員が斜面の崩落状況を現地調査。「5カ月間も放置できる状態ではない。是正工事や代執行とともに、建設残土の持ち込みを許さない土砂条例の制定を強く求めていきたい」と話しています。