「働き方改革」一括法への反対討論を行う倉林議員(2018年6月、参院本会議)=「しんぶん赤旗」提供

 労働者の命をおびやかす「残業代ゼロ制度」(高度プロフェッショナル制度)などを柱とする「働き方改革」一括法が、昨年6月、自民・公明・維新の賛成多数により可決・成立しました。日本共産党の倉林明子参院議員は、大企業の働き方の実態の告発や、過労死遺族の思いを代弁した追及を行い、長時間労働とただ働きを強いる法案の廃案を求めました。こうした論戦が、各職場へ労働改悪を持ち込ませないたたかいへと続いています。

声詰まらせ首相を追及

 「過労死遺族に説明もできない法案は撤回しかない」―倉林議員は、「全国過労死を考える家族の会」や労働団体、野党と共同して、「働き方改革」一括法を追及しました。

 「働き方改革」一括法は、▽一部の労働者を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(「残業代ゼロ」制度)▽過労死ラインの「月100時間未満」残業を容認する「残業時間の上限規制」―の導入などが盛り込まれ、さらに、8本もの法案を一括して改定したものです。

 高プロ制度は、労働時間規制を完全に外し、残業手当もなく、労働時間把握義務もないことから、過労死しても過労死認定されない危険性があります。

 倉林議員は、安倍首相が出席した2018年6月の参院厚生労働委員会で質問に立ち、高プロ制度が労働時間の規制を完全に外し、残業手当もない制度だと批判。政府が2015年に過労死をゼロにすることを目的に閣議決定した「過労死防止大綱」を示し、「過労死防止の観点から明らかに逆行している」と指摘。過労死遺族が何度も安倍首相への面談を要請しても会おうとしない首相の姿勢について、「過労死の悲劇を二度と繰り返さないと発言していたのは総理ですよ。家族に会うべきだ」と、涙で声を詰まらせながら追及。首相は「この法案を担当し、議論の経過を十分承知している、厚労省、厚労大臣が対応することが適切」と冷たく言い放ち、倉林議員は「過労死遺族に会って説明もできない法案は撤回しかない」と迫りました。

 「働き方改革」一括法の審議を通じ、野党共闘も前進しました。野党合同ヒアリングを41回行い、安倍首相が「裁量労働制は一般労働者よりも労働時間が短くなる」とアピールした答弁の矛盾を追及。労働時間データのねつ造などを認めさせ、財界が強く求めてきた「裁量労働制」の対象拡大を法案から削除させました。

裁量労働制の問題点を告発

 裁量労働制とは、実際に働いた時間と関係なく、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす「みなし労働時間制」の1つで、労働団体から「定額働かせ放題」と批判されてきました。倉林議員は、同法の審議の中で、裁量労働制の問題点を明らかにし、データねつ造や大企業の深刻な実態を告発しました。

 ソニーでは社員2人に1人が裁量労働制を適用されたうえ、1日23時間労働(休憩あわせ24時間)の残業協定を結んでいる実態を告発。「過労死ライン」の残業を容認する同法案では是正できないとして、1日、1週単位の時間外労働の上限規制とインターバル規制が必要だとただしました。損保ジャパン日本興亜の裁量労働制について、営業職への違法適用が撤回されたものの、同様のみなし労働時間制である「事業場外みなし労働時間制」が適用され、現場の実態は変わらないと指摘。「法令違反だ」と迫りました(18年6月の参院厚生労働委員会)。

 また、政府が作成した、裁量労働制などの適用労働者の割合を集計した資料の一般労働者に「管理監督者」を含んでいたことを告発。「管理監督者」は労働基準法41条によって労働時間の規定を受けず、一般労働者とは労働時間管理が異なることを指摘し、「間違った理解を与えるデータを労政審に出していた」と批判。加藤勝信厚労相は、「正確性に欠けていた」と間違いを認めました。倉林議員は、法定労働時間が適用されない労働者が現状で7割にものぼっている可能性を指摘し、「実態を把握し、労政審に審議を差し戻すべき」と強調しました。

不当な雇い止め許さず申し入れ

 さらに、倉林議員は、不当な雇い止めの中止を求め奮闘してきました。有期雇用で5年を超えて働く労働者に、無期雇用への転換を申し込む権利(無期転換ルール)が18年4月から発生することから、企業による有期雇用労働者の雇い止めが大きな問題になりました。

 倉林議員は同年2月に京都労働局へ申し入れを行い、「無期転換ルール実施にあたり、労働者が雇い止めをされることがあってはならない」と述べ、無期転換が労働者の権利であることを周知するよう求めました。

中嶌清美さん
中嶌清美さん

■過労死遺族の思い代弁/過労死防止京都連絡会代表 中嶌清美さん

 第一次安倍内閣から始まる、労働時間の規制緩和政策が許せません。高プロ制度を盛り込んだ「働き方改革」法は、私たち過労死遺族の願いを踏みにじる法律です。こんな法律を現場へ持ち込ませてはなりませんし、撤回すべきです。

 病院の事務長として働いてきた私の夫は、1990年、41歳の若さで過労死しました。私は「京都労災被災者家族の会」に入会し、過労死を生んではならないと、過労死等防止対策推進法制定運動にも参加してきました。

 しかし、法律制定4日後に安倍政権は法の精神に反する「日本再興戦略2014」を閣議決定し、今日の「働き方改革」法を成立させました。今回は裁量労働制の業務拡大を断念させました。しかし、依然として裁量労働制の業務拡大を狙っています。絶対に実現させてはなりません。

 倉林議員は、私たちの思いを代弁し「遺族に会って説明できない法案は撤回すべき」「過労死防止法の理念に反する」と迫りました。そして医療現場の労働実態を告発し、過労死をなくす論戦をされてきました。安倍政権の労働改悪をやめさせ、遺族の願いを実現するためにもさらなる奮闘を期待しています。

梶川憲さん
梶川憲さん

■あの追及が政治動かした/日本共産党京都労働者後援会代表 梶川 憲さん

 「働き方改革」一括法案の審議が山場を迎え、倉林明子さんが追及に立った参院厚生労働委員会(18年6月26日)の模様をラジオで聞き、この議席の値打ちをかみしめたことは今も鮮明です。

 過労死家族らが見守るなかで、「過労死防止大綱」(2015年、閣議決定)に書かれた前文、「法が成立した原動力には、過労死に至った多くの尊い生命と深い悲しみ、喪失感を持つ遺族による四半世紀にも及ぶ活動があった」と読み上げ始めて、涙で詰まった質問です。

 倉林さんは安倍晋三首相に、遺族となぜ会おうとしないのかと迫り、労働時間の正確な把握、残業手当の全額支給を法定化すべきだとただし、長時間労働とただ働きを強いる法案の廃案を求めました。労働安全衛生法が改正され、今年4月から、「客観的方法による労働時間把握」が義務化されました。あの追及が、「残業代ゼロ法案」を使えなくし、労働時間の把握の法定化へ、政治を動かした瞬間のやりとりです。

 過労死の労災認定では長年、長時間労働の証拠となる労働時間を証明することに苦労しましたが、倉林さんの論戦とあいまって、やっと雇用者に労働時間の把握義務を負わせました。この中身を紹介したくて、今も議事録をスマートフォンに保存しています。

 倉林さんは、労働者、国民の実態を国会論戦でぶつけ、運動の推進の糧となる成果を返すという、双方向の力を大切に論戦を組み立てています。医労連出身の仲間であり、京都になくてはならない議席だと実感しています。