1面中央に安倍首相の顔写真が掲載された「読売KODOMO新聞」特別版

 「G20大阪サミット」(6月28、29日・大阪市)を特集した「読売KODOMO新聞」特別版が、京都市の全ての小中学校及び総合支援学校(小・中学部)と宇治市の一部の小中学校の児童・生徒に、無償で配布されていることが分かりました。配布数は計約11万部で、読売新聞への便宜供用となるとともに、紙面には自民党総裁である安倍首相の写真が大きく掲載され、参院選を目前に控えるなか、公教育の中立性からも問題があるもの。京都市教委に対して、抗議の申し入れが相次ぎ、日本共産党京都市議団は抗議声明を発表しました。

 新聞(タブロイド判20㌻)は、読売新聞大阪本社が、大阪府・市や関西経済3団体などでつくる「G20大阪サミット関西推進協力協議会」と連携して発行したものです。

 同社は5月に、京都府内では京都市と宇治市に配布を要請。京都市教委では、新聞を教材として活用するNIE(Newspaper in Educationの略)の一環などとして、対象の計247校の全児童・生徒に約10万部の配布を決定。宇治市教委は、小・中計32校に対して配布の有無や必要部数を聞き、25校(小17、中8)の児童・生徒に約7700部の配布を決めました。配布は計10万7700部。両教委とも、具体的活用方法は学校の判断にまかせていると説明しますが、生徒や保護者の意思は確認されていません。特定紙を大規模に配布し、子どもたちに持ち帰らせるやり方は、前例のない異常なものです。

 紙面では、読売新聞や私立学校の全面広告をはじめ学習塾の宣伝が並び、過剰な便宜供用と言えます。また、1面トップには、「世界のリーダー集結」との大見出しで安倍首相の顔写真を掲載。「日本の安倍晋三首相が会議の議長を務め、話し合いの成果をまとめます」と記事が続き、参院選を前に、公教育の中立性を逸脱した内容となっています。

 保護者からは、疑問や批判の声が上がります。小学1年生の女子児童の父親(43)は「安倍首相の顔写真にまず驚きました。1年生に理解できるものなのか、なぜ1紙だけなのか、疑問だらけ」で、担任への連絡帳に意見を書きました。その後、校長から電話で説明があったものの、「配布はやっぱり納得できない」と言います。第四錦林小(左京区)に2人の子どもを通わせる林聡子さん(39)は「参院選を前に、政治的意図を感じます。市教委が認めていいことですか」と訴えます。

 京都市教委に対し、市教組は6月24日、「市教委の判断は誤っており、公教育の信頼性を傷つけるもの」と指摘し、「猛省と今後の改善」を求め、新婦人京都府本部は21日、「行政が、学校に有無を言わさず配布させる」ことは「あってはならない」とし、「今後、このようなことがないよう」、それぞれ申し入れました。

 日本共産党京都市議団は21日、京都市の対応は突出していると批判し、特定の報道物を行政が学校を通じて一律配布することはあってはならないとする抗議声明を発表しました。

■公教育の政治的中立侵す/京都大学教授(教育学)・駒込武さん

 問題の一つは、読売新聞社や広告を掲載した学習塾などへの過剰な便宜供用です。「義務教育諸学校教科用図書検定基準」では、特定の営利企業や商品などの宣伝を禁じています。今回の配布は「教科用図書」ではないものの、教科書と同様に、無償提供であるため、受け取る側で取捨選択ができません。従って、この基準に準じた制約があるべきで、学校現場にズカズカと宣伝が入り込むようなやり方が許されるものではありません。

 二つ目は、公教育の政治的中立を侵すという点です。新聞社には報道機関としての独自の政治的立場があるだけに、行政が特定紙を生徒に無料配布することは大きな問題です。京都市教委の言うNIEの一環であれば、複数の新聞を比較検討し、生徒がそれぞれの政治的立場を見極める力を養うことが必要です。

参院選控え事前運動に

 加えて、参院選を控えて、自民党総裁でもある安倍首相の写真を中心に据えた新聞配布は、特定政党支持などを禁じた教育基本法の規定に抵触し、公職選挙法の禁ずる事前運動に相当する可能性があります。

 今回の問題は、安倍首相を持ち上げる企業が得をするという点で、森友・加計問題と似た構造にあると考えます。今回の配布は、メディアと教育の質をゆがめることにしかなりません。